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リフレクション ※

覚えてる間にSSを載せておきます。

「双子の日」にちなんで。

六章後のちょっとした小話です。

 昔から、よく嘘を見抜かれていた方だとは思う。

 それは何故って?誰も教えてくれないけど、まさか顔に出てるとか。いやいや、それは無いと思う。……無いはず、だよね?確かにポーカーフェイスは苦手だけど。

 特にアルにはよく見破られたりして、これもやっぱり双子だからかなぁと思っていたり。

 だけどさぁ?

 ……だけど、何もこんな時にバラさなくたって良いじゃない?って思うんだよね。あのね、本気でお兄ちゃんを泣かせにくるのほんと止めて欲しいんだけど。



「男装しているご令嬢と間違えられたんだって?」


 始まりはアルの、このたった一つの発言だった。

 ただ、場所が悪かっただけで、と思いたいけどそれよりも状況は酷い。

 今日は、コルネリオ様によるアリアの一件がようやく収束して、どうしても出席しなければならない夜会にエルを伴って参加していたのだ。

 そう、現地でオーガスト様の婚約者としてアルも居るし、と。

 そんな気軽なノリで会場に入ったら、アシュトン・ルドーも何故か来ていた。どうやら、僕が今日の夜会に行くという事を誰かに聞いて急遽招待状を送ってもらったらしい。最近、微妙にグランヴァル学院へ入りたての頃のセラフィナさんと行動が被ってみえるのは気のせいだと思いたい。

 そんな訳で、アルとエル、それからアシュトン・ルドーとで和気藹々とそれなりにおしゃべりに興じている時だった。

 アルから、先程の「そういえば、男装しているご令嬢と間違えられたんだって?」という言葉が飛び出したのは。

 エルとセラフィナさんの誘拐について、アシュトン・ルドーは知るよしもない。なので、エルたちの救出の時に、という枕詞を敢えて省いたのは偉いとお兄ちゃんは思います。でも、さ。

「まあ。それは本当ですの?」

「男装したご令嬢というのは、つまり今と同じような服装でありながら性別を間違えられたという訳か」

 あ、そこ、詳しく言い直さなくてもけっこうです。……浅かった傷が開いちゃう。浅かないけど。くっ。

「ど、どうして、それを」

 何もここで発言しなくても良かったんじゃない?とも思うんだよね。

 だって、ほら、エルにはずっと黙っていたわけだしさ。まあ、『いつ』男装したご令嬢に間違えられたのかの詳細は省いちゃってるから気付いてないけど……いや、そういう問題じゃなくて。

 下手に隠したい気持ちが表れてしまったのか、つい僕も動揺を露わにしてしまった。

「もしかして、襲われ」

「てませんから。たまたま一緒だった人に助けてもらいましたので」

 なんて、更にアシュトン・ルドーの言葉に過剰に反応を返したばかりに、ほらやっぱり襲われそうになったんだーという空気が流れてかなりつらい。もうこれって、針の筵というやつだよね。

「イオ様に大事なくて良かったですわ」

「エル、ありがとう」

 さすがはエル。僕の唯一の癒やしの存在。ただ、怪我はなくとも、あの屈辱はエルには知られたくなかったよ。ううっ、アルの馬鹿、という目で妹に視線を投げれば。

「イオはさ、もっと自覚した方が良いと思うんだよね」

 アルがわざとこの場でぶっちゃけたのだと分かってしまった。要は、僕の危機管理について、この先ずっと傍に居るであろう二人にも言っておきたかったって事だろうか。そんな将来を見据えるなんて、アルらしくない。それだけ、僕の事を心配してくれているって事だろうけども。……嬉しいやら切ないやら。

それに、エルは分かるけどアシュトン・ルドーが含まれている事に驚きが。この人、僕の執事になりたいとか言ってるけど既に爵位持ちなんだよ?んでもって、アルの中でこの人はどういう位置付けなんだろうか。とまあ、そういうのは置いといて、今は会話に集中すべきか。

「何を?」

 だけどさ、危機管理が少しばかり怪しいからといって、自覚云々と言われてもなぁ。いきなり殴りかかってくるような人はいつだっているじゃない。物理でも言葉でも。それをどう自覚しろというのか意味が分からない。――ので、首を傾げたら。

「本気で言っているのか?」

「こういう子なんだよ」

「……イオ様」

 何故か三人が――まさか、エルにすらやや呆れた顔で見つめられてしまって。

 いやいや、とんだ言いがかりでしょ、と思わずにはいられない。というか、おかしな人に『僕』が絡まれやすいのって――

「アルと顔が似ているから、つい話しかけてしまうんじゃないの?」

 少なくとも僕は父より母似だと思うし、なによりうちの妹は男の僕から見ても綺麗だし。自慢したいだけですが、何か?

 えっへん、と内心で胸を張って言ったのに、何故かその妹から半目で見られた。うーん、度し難い。

「聞くが、お前は己の容姿についてどう思ってるんだ?」

 コルネリオ様とミュールズ国一位二位を争う美形のあなたの足下にも及びませんよ、と言いたい所だけども。

「普通よりかは上、なのかなぁと。双子と言ったって、僕はアルのようにキラキラしていませんし」

 ほんとね、うちの子可愛いんだってば。なので、つい甘やかしてしまうんだけれども。

「だから、アルの代わりをしてるとバレやしないかヒヤヒヤしちゃって。……って、え?」

 ……えーっと。

 なんだろう?どうして、皆黙って俯いてしまうのかな?あげくに、アシュトン・ルドーもため息吐くとか失礼じゃない?え?それ、新手の嫌がらせとかじゃないよね?しかも、何故か空気が重いとか。えーっと、えと……こんな時は。

「そういえば、この間もお城で仕事中にどこかの伯爵様に声を掛けられたんだよ。私の永遠の女神に捧げる!とか大仰な手振りで大きな花束持ってさ。何を考えてるんだろうね?だから、お礼は言っといたけど、大変申し訳ありませんが妹は殿下の婚約者ですので渡せませんよ、ってお断りしたから安心してね」

 直接、アルに声を掛けられるのも嫌だけど、僕経由で妹を口説けると思ったなら大間違いだ。

 この場の空気を変える為に、双子ならではの話題を出してみたけども。

「「「……」」」

 ……え?

 雑談は貴族の嗜み、だよね?えっ?えっ?

「何か、まずかった?」

 もしかして、名前を聞き流して忘れちゃったのが悪かったとか?これって礼儀違反なの?それとも、お礼とは別に何かお返しした方が良かった?

「その方のお名前は?」

 三人の沈黙にドキドキしていたら、ようやくエルがしゃべってくれてホッとする。だけど、やっぱり名前を覚えておくべきだったんだなぁと自分の失敗に少しへこむ、――と。

「思い出せないのなら、どういう特徴だったか教えてほしい」

「お願いだから、王宮でもイオはなるべく一人になっちゃ駄目だよ」

 真顔で訊ねてくるアシュトン・ルドーに引きながらも、僕の手を取って切実な顔でアルが不安そうな顔をするので、もうどうしたら良いのか分からなくなってしまった。


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