甘い夢だけ視ていたい ※
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フェルメールの視点。
昔から、彼は面白いものが好きだった。
例えば、八百屋を営む父親が仕入れ先で手に入れてくる異国の玩具であるとか、珍しい野菜であるとか。他にも、世界中を旅して回るサーカスが巡業でやってきた日には、目を輝かせて観に行ったものだ。
だから、彼はその事に気が付いた時、好奇心を抑える事など出来なかった。
ましてや、その年の新入生の中で容姿が一番整っていると噂されるほどなのに、同じ顔がもう一人存在するというのだから、これは会わずにいられようか。
そう思うのは、もはや彼にとって当たり前としか言いようがないものだった。
だが、まさかそれが彼にとっての運命となろうとは。
初めて会った感想というと、まるで空気のように重厚な高貴さを身に纏う警戒心の強い子猫。それも、平民である自分には手が出せないような最上級の。
ここで忘れてはいけないのは、彼は昔から面白いものが好きであったという事である。
だから当然、通常であればたまたま同じ部屋の住人となった他とは毛色が違う珍しい猫の方に魅力を感じるはずである。
であるのに。
気がつけば、彼女と彼を比較する自分がいた。
それは、何気ない仕草や雰囲気、やり取りや言い回しもあったりして。
時に、彼女から彼の面影を探してさえいた。
そこで、彼は気が付いたのだ。
絶対に、手に入らないと分かっているはずの存在に好意を寄せてしまっている自分がいるということを。
正に、青天の霹靂というべきだろう。
年下の、しかも同性に対して焦がれるなんて。
いや、同性というのはさして問題ではない。あれだけの美しさを兼ね備えているのであれば、老若男女問わず誰もが見惚れてしまうだろうから。
驚くべきことは、既に他人が目を付けているという事を理解しているのに、それでも欲しがっている自分がいるということだ。しかも、その人物といえば、敵対すれば執拗な嫌がらせは免れないほど嫌な相手ときている。
それでも。
その、白くて柔らかそうな肌に触れたいと思った。
その、優しく清らかな心を乱して惑わせたいと思った。
その、蒼い瞳を虜にして。
あわよくば己のものだけに、と思えてしまった。
独占欲など今まで持ち合わせた事などなかったのに。
彼は、いつしか本気で好きになってしまっていたのだ。
「フェルメールさん?」
その、小さな背中越しに伝わる息遣いや体温がとても愛おしい。
だから、せめて今だけは甘い夢だけ視ていたい、と心から願うのだ。




