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S・O・S ※

小話ながら、閲覧、ブクマそれから評価をありがとうございます。


「メイドの日」に書いたSSです。



「……これはどういう事なのかな?」

 朝起きたら、仁王立ちしたアルが立っていて。まあ、それはよくある事なんだけれどさ。

 前世のマジシャンもびっくりするぐらいの指パッチンをしたかと思えば、心得たとばかりのサラにいきなり襲われた。言葉通り。もうね、いつもの従順なサラはどこに行ったの?と思うくらい。少し遠くを見てしまうのは許してほしい。

 なにせ、僕の一番の楽しみといえば、起きがけの微睡みを堪能する事なのだから。寝起きドッキリとか心臓によくない。まあ、それすらなくて、頭が働かない合間に、事は全て終わってしまってたんだけど。

「どういうって?」

 ベッドから見上げたアルは、実に楽しげな笑顔だった。

「だから、こ、れ!」

 分かりやすく、身に纏った服を引っ張れば、何故かサラに睨まれた。なにゆえに!?というか、理不尽な。

「すっごく似合ってるよ!」

「ありがとう……じゃなくてさ」

 ん?って、可愛く小首を傾げても駄目だからね!可愛いけどさ。

「どうして、侍女服?」

 というか、これっていわゆるメイド服ってやつじゃないかな?前世で、部活の後輩がメイド喫茶行ってきたんですよ!とか言って写真見せてくれたのと似てるんだけど。

「イオに似合うと思って!」

「……」

 ごめん。純粋に喜んで良いのか、悩んで良いよね。お兄ちゃん、君の考えてる事がワカラナイヨ。

「ねっ、立って立って!」

「え、……う、うん」

 あーもう。なるようになれ!

 朝からどっと疲れたけれど、アルに手を引かれてベッドから腰をあげる。

 学院の制服とは違って、お給事をメインとした仕様になっているので、純白のエプロンがアクセントになっている。まあ、レースやらリボンやら無駄な部分が多いけど。おまけに、ヘッドドレスもリボンが横にあるので、視界に映るしさ。

「ね、ねぇ、ちょっとスカート短くない?」

 というのも、まるで覗いて下さいといわんばかりの膝丈サイズで。

「けど、これが今年の流行らしいよ?」


 何のだよ。


 そう心の中で突っ込む僕は決して悪くないと思う。

「それに、ソックスもえらく長いし」

「それも、以下同文」

 ああ、女の子にはついていけない。つい、半笑いになるのは許してほしい。

「アル、正直に答えて。これ、誰の差しがねなの?」

 いつも突飛な行動をするのはうちの妹のよくある事だけど、ここまで用意周到な真似など出来ない。

 明らかに誰か黒幕がいるはずに違いない。実はそれも、見当はついてるけれど。

「ん、んー?何の事?」

 あ、可愛い。じゃなくて。わざと僕の目から視線を反らして、分からない振りをする妹の顔を両手で挟む。

「アル」

「し、知らないなぁ」

 ……むう。頑固な。

「アルにだけ特別にこの格好で耳掃除してあげる」

「セラフィナです!……あっ!」

 ……やっぱりか。

 こんな日本のサブカルチャーみたいな真似事、セラフィナさん以外に思いつく人いないもの。

 僕にこんなもの着せても何も面白味なんてないだろうに。

「なに考えてるんだか」

「でも、可愛いよ?」

 はあ、とため息をついた僕に、アルがこてんと首を傾けふにゃりと笑う。

 僕より明らかにアルの方が可愛いのにな。どうせなら、アルに着て欲しかった……なんて。これって危険思想だよね。ああ、もうやだ!

「イオ?」

「……ごめん、何でもない」

 エルやアルが着るよりマシかな。僕は男だから、見られても減らないし。

 そう思えたら、少しばかり落ち着いた。

「……でさ、イオ」

「ん?なに?」

 でも、こんな姿は人前で見せられないなと思いながらアルを見れば。

 今度は、何故か珍しく困った顔で微笑まれた。

「……イオが冷静さを取り戻して着替える前に、こっちに来るって」

「えっ?」

「だから、ごめん!」

「は?な、ちょっ!」

 何の事、と聞き返す前に、アルの呼び声と共にノアがいきなり目の前に現れる。相変わらずの忍者みたいな出現に驚いて。それと同時に、企みがまだ持続していた事に気付いて逃げようと一歩引くも、直ぐにノアに腕を捕られた。

「ふははははは!逃がすか、クソガキ」

「っ、それ完全に悪人のセリフ!」

 逃げられないように腕を捻られ、抵抗を封じられる。まさか、ノアまで使うなんて!さすがに卑怯な手口で、視界に映ったサラに視線で助けを求めてみるも。

「……」

 ええっ!嘘でしょ。サラ、サラさん、あの、僕今すごく無体な事されてるんですけど。ここで、まさかの裏切りですか!

「ごめん、イオ。今回、その服を準備してくれたのお母様とサラなんだ」

「……」

 ……忘れてた。アルには母上という強い味方がいるという事を。

「という事は」

 考えたくない。

 もう、今日はこの部屋から一歩も外に出たくない。

 まさに、絶望以外のなにものでもない。

 僕の予想に、アルが深く頷いたのを見て涙が出てきた。

「皆、この日を楽しみにしてたから」

 明らかに慰めではない。

 本音が駄々もれってこういう事を言うんだよね?

「……女は恐い」

 妙な静けさの中、抵抗を止めた僕を羽交い締めにしたまま、ノアがぼそりと呟いた。

 珍しく、ノアに同調したそんな朝だった。

きょうもまただれか乙女のピンチということで。

イオにはメイド服を着させる機会なんて絶対来ないなと思っていたので楽しかったです。

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