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このこどこのこ? ※

小話ながら、閲覧、ブクマそれから評価をありがとうございます。


イオとエルとセラフィナさんの日常の一コマです。


 それを貰ったのは、昨日からの時点で七回目の事だった。


 目の前には、何故か期待の眼差しで僕を見つめるセラフィナさん。っていうか、実は彼女に至ってはこれで二つ目になるんだけど。

「……えっと」

 当然、戸惑うのは分かってるよね?

「ちょっと手芸にハマっちゃって」

 なんていうわりには、その手が包帯まみれですけど。……聞かない方が良いんだろうなぁ。

「そうなんだ」

「はい!」

 うーん、よく分からない。

 っていうか、セラフィナさんに何か期待されているのは分かった。分かったけども、どうして周りの生徒たちもが妙に期待した眼差しで見てくるのかな?

「まあ、お上手ですわね!」

 そこへ、用事を済ませてきたエルが僕の隣りに座りながら可愛いですわね、と微笑んだ。

「ありがとうございます。私、ハマるとどんどんそれに夢中になっちゃうタイプなんですよね」

「そうでしたの。それにしても、愛らしい表情がなんともいえませんわ」

「良かったら、エル様にもお作りしますよ」

「あら、よろしいの?では、楽しみにお待ちしておりますわね」

 へぇ、やっぱり女の子ってこういうものが好きなんだ。

 嬉しそうに笑うエルが可愛くて、僕もつい顔がほころんでしまう。

「エルもこういうものが好きなんだね」

「はい。見ているだけで人を和ませる力がありますわよね」

「ああ、そうだね」

 前世では、どこにでもあったから全く気にした事はなかったけれど、この世界であまり見かけていなかったなぁと思い返す。

「もしかして、これって高いの?」

 今まで女の子特有の遊びに関わった事がなかったから、相応の金額が分からない。アルは女の子だけど、ちょっと特殊というか何か違う。いや、あれはあれで本人が楽しいから何よりだと思うけど。

 母上もどちらかというとアルよりだし、おばあ様も……ああ、というか、うちの家系の女性は全く参考にならないな。あ、でも、父上は仕事柄知ってそう。いや、聞こうとは思えない。はっきり言って恐い。

 それよりも、セラフィナさんの二つを抜きにしても、残りの五つの相手の事が気になった。

 そもそも、どうして急にプレゼントされる事になったのかが分からないけど、一つは生徒会の役員の中では一番無害なコレットさんにいただいた。何でも、ご友人への贈り物を買いに街に出たら、暴漢に襲われそうになっている女性を助けたそうな。女性は、近くのお店の店員さんだったとかで、お礼にと貰ったけれども、自分には可愛すぎるので貰ってくれと言われた。普段は独り言が多くてしかも毒舌だったりするけど、たまにこういった事に巻き込まれるみたいで何だか不思議な人だと思う。それに、たまたま出会ったのが僕だっただけで、誰でも良かったんじゃないかなと。うん、なのでやっぱりあの人は特に意味はないだろう。

 二つ目が、その時僕の隣りにいたアシュトン・ルドー。想像したくないけれど、コレットさんに対抗してわざわざ手配したような気がしてる。半日で調達する辺り、何か執念を感じてしまう。

 三つ目はセラフィナさんだったけど、セラフィナさんもちょうどアシュトン・ルドーに貰った時に立ち会ったので、……いや、もう何も言うまい。多分、誰もが察する事が出来るしね。

 そして昨日の放課後、校舎を出た所で待ち伏せをしていたのか殿下に渡された。

 相変わらずのツンデレと恥じらいを兼ね備えた殿下は、何故か負け犬のような事を叫んで脱兎の如く去って行った。

 もう訳が分からない。

 それに残りの二つに関しては、知らない生徒から突然渡された。

 もしかして、僕の好きなものだとでも認識されてしまってるのかな?別に嫌いじゃないけど、好きでもないんだけどなぁ。

 首を傾げる僕を挟んで、セラフィナさんとエルが視線を合わせた。

「前世で売られているものよりは高めですかね。全てお手製ですしね」

「私は、幼少の頃お誕生日に何度かお父様からいただきましたわ」

「そうなんだ」

 一つ一つ手作りで、しかも貴族の娘が貰えるものといえば確かに値段は高めな気がする。

「昨日からいっぱい貰ったけど、金額が高いなら何だか申し訳なく思えるね」

 僕より欲しい子はたくさんいるのに、悪い気がする。

「ですから、コストを下げるために手作りしました!」

 えっへん、とセラフィナさんが胸を張ってるけどその努力の方向性間違ってるから。

「それにしても、どうして同じぬいぐるみばかりなのかな」

 セラフィナさんから貰った手のひらサイズのぬいぐるみが、今もキョトンとした顔付きで僕を見つめる。その愛らしい表情は可愛いけれど、何か解せない。

「同じとは?」

 内心で悩む僕の横で、ぬいぐるみと同様にエルがキョトンと小首を傾げる。

「いやね、ぬいぐるみを貰うのはこの際置いといて、全てにゃんこさんばかりだからさ……って、セラフィナさん!?」

「……っ、尊い!!」

 いや、何が?

 鼻血を出す訳でもなく、急に心臓を抑えて震えるからどうしたのかと思った。思わず、身を引いてしまった僕とは違い、エルがそこで小さく何度か頷いたので何か分かったのかもしれない。

「エル?」

「何でもありませんのよ」

 いや、何故このタイミングで急に満面の笑みになるの?

「そういえば、さっき園庭で子猫を見かけましたの。母猫とはぐれてしまったのかもしれませんわね」

「えっ、ちっさいにゃんこさんが?」

 それはいけない。お母さんにゃんことはぐれたのなら、探してあげなきゃ。

「私、用事があったので置いてきてしまったのですけれど、寂しそうに鳴いておりましたわ」

「……わ、私ちょっと行ってくる!」

 こうしちゃいられない、と思い立って教室を出た僕はその後の二人がどういう会話をしたのかは知らない。

 ただ、しばらくしてにゃんこさんのぬいぐるみを、他の生徒たちからも貰うようになるとは、この時は思いもしていなかった。





「エ、エルさまぁ。どうして、あの方猫をにゃんこって呼ぶんですか。しかも、無自覚とか。可愛さの破壊力半端ないんですけど」

「幼少の頃からずっとですわよ。アルは普通に猫って言いますけれど。きっと、癖だと思いますわ」



コレットくんはラッキースケベの位置の人です。

アシュトンとオーガストは当然、自身の目の前で言って欲しかったがための行動。

ちなみにオーガストは、黒髪の某魔導師から教えてもらいました。

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