OUTSIDE:SAD
いい加減SSが溜まってきたので纏めることにしました。
四章終了後の枝分かれ的な小話となります。
ネネのその後。
※尚、このお話に本編主人公は出てきません。
今回の仕事先は、『当たり』だったな、と彼は漠然と思った。
終始、和やかなムードで行われた視察期間。彼らを先導する若い指導者は、彼と同じ年代で珍しい色合いの髪の女性だった。
そんな彼女とは、いつの間にかよくしゃべるようになって、気付けば大抵行動を共にしていた。
自分にしては珍しいかもしれない、とふと思い返す。
自国では、縦にも横にも張り巡らされたしがらみが彼に絡みついて身動き出来ず、誰にも頼ることなく孤独に生きるのが一番の保身だったのだから。
――それなのに。
彼女は、先に調査していた通りのすっきりした、いや物事をきちんと分けられるかっちりとした性格の持ち主で、いっさいお互いの境遇には触れず、教育現場で何を改善すべきかを常に探っているような人だった。良くいえば、勤勉家。悪く言えば、真面目過ぎる。
普段の彼ならば、あまり近寄らないはずの彼女といつしか話し込むようになっていた。
あまつさえ、そんな彼女と取り合いのような状態になってしまったのが、この国のただの学生である心優しき少年で。彼の事も、いつしか気に入っている自分がいた事に驚きを隠せなかった。
そんな彼の容姿は、形容しがたいほど美しく、まるでビスクドールを見ているかのよう。しかし、可憐で直ぐに壊れてしまいそうな人形は、ただのお人形なのではなくて、喜怒哀楽がきちんと備わっており表情がコロコロと変わる優れものだ。否、彼を人形と表すべきでは失礼にあたるだろう。
性格も良く、正義心もあり勇敢で心優しい。なにより、彼がどのような振る舞いをしていても、誠実に応えてくれる所に好感が持てた。そこは、髪色が珍しい彼女も同様であるのだが。
そんな居心地の良い仕事先とも、ついさきほど場を辞した。
乗っていた自国行きの馬車を奔らせ、郊外に出る辺りで乗り捨てる。御者には、少し大目に金を渡したので文句は出ない。
いつものように、ビリジアンブルーのコートを着込みながら足早に歩いていれば、商店街の路地から真っ赤な色合いが特徴的なショートボブの少女が彼に向かって飛び出してきた。
「お疲れ様です!」
その黄緑色の瞳と目が合えば、途端に勢いよく敬礼される。元気だな、と思いながらも。
「はい、ダウトー。ここで、そゆ事言っちゃわないよ~」
「はうっ!そ、そうでしたね!申し訳ありません、レベッカ様」
「それもねぇー」
彼女と行動をする事になって、もう何度目になるのかも分からないため息をはき出し、レベッカ・ネネは人の間をすり抜けながらも足早に先を急ぐ。
当然、焦燥感にかられた顔をしている少女もそんな彼に合わせているのだが、お互いに慣れているのか息切れもせずに会話は続けられていく。
「ところで、レベッカ様。例のものは?」
「はいはい、ありますよー。って事だから、せいぜい追いつかれないよう急ぎ足でヨロシクね~」
そう言って、にっこりと笑いかければ少女は己の髪色のように頬を染めて何度も頷く。
レベッカが、思わずそれに苦笑いを浮かべてしまうのは、彼女の壮絶な過去を思い返せばこそだが、忘れた方が良いが故にそこには触れないようにした。
「実は、ここから五キロ先に馬を用意しております!」
「ええっ?本当に~?」
「はい!昨日もちゃんと確認して参りましたよ!」
「ほんとーに本当なんだね~?」
「むきーっ!酷いです!今朝だって、確認作業しましたよ!?」
疑りの目でレベッカは見下ろすと、行く先々で何かしら失敗を犯す彼女だったが、視察で離れていたこの二週間で自分でもさすがに危機感を募らせたのか、目を泳がす事無くジッと見つめ返された。
ならば、と彼は思う。彼女の教育係である己が言えるとすれば、ただ一つ。
「せめて、三キロ先にして欲しかった~!」
「なっ!そ、そこは、こう……もっと褒めるべきじゃないですか!?」
「……君は、いまいちまだ信用出来ないっていうか~」
フォローする側の身にもなってよー、と言いながら視界の邪魔になった髪を耳に掛ける。そして、目の端で肩を落とす少女を敢えて見ずに。
「まっ、馬があれば逃げ切れるでしょ。ここは、女神様の采配にお任せしましょう~」
そう言いながら、背の低い彼女の頭をそっと撫でた。
「……っ!」
「足を止めなーい」
「は、はい!」
「それから、泣かない。あーほんと泣き虫だなぁ~、ルネッタはー」
聖ヴィルフ国は、人間関係が面白い(カオス)のでいつか書けたらと思います。
追加。
タイトルのSADは「悲しい」のSADではなく、サディスティックのサドという意味でした。