12 停滞
八月に入ると連日の猛暑。分かってはいたが製作に大いに悪影響を及ぼした。汗をかきつつゲームを作れるほど自分は勤勉ではない。当然クーラー完備の居間での作業になるのだが、同居する家族がいるのでさすがに原画を描くのは憚られる。製作中のバカゲーにはかなりいかがわしい絵もあるので、そんなもんが見つかった日には家庭崩壊すら起しかねない。エロゲー製作者で家庭を壊した人っているのかな? などと、小説家の自分が不謹慎な想像を膨らませる。結局ほとんどはパソコン上での作業である。幸い落とした楽曲は沢山あるのでそれをゲームに組み込む作業に集中できた。しかもこの頃になるとグラフィッカーが腕前をかなり上げ、わずか三日で三枚の塗りを完了させた。
なーんだ、一枚に一日かけてた頃と変わってないじゃん、などと言ってはいけない。その一日は休みの日を利用した一日だったが、今回の三枚は出勤日での三日なのである。
す、すごい! 以前から成長著しいとは思っていたが、まさかこれほどのポテンシャルを秘めていたとは。このまま成長すれば十分で一枚上げられるようになるかも。いや、さすがにそれは無理か。よし、心優しい俺様は更なる成長を促すため、グラフィッカーにどんどん仕事を発注してやろう! ……こんなことを考えるから成長した社員がよその会社に行ってしまうんだな。自分は社長には絶対向いてないと痛感。
しかしそのおかげでキャラ絵もひと通り揃い、かなりゲームらしくなった。このまま体験版としてアップしてもいいくらいである。だが、まだ完成には至らない。
先日落とした背景はゲームに組み込むと少々絵が粗くなってしまう。自分の落し方が悪かったのかもしれない。また、楽曲もコンプリートしたつもりだったが、どうしても場面に合わない曲があった。十曲という制約があるならテーマは決めたい。それと効果音。全くノーマークだったが、効果音も入れられるのならあるに越したことはない。これはもう一度必殺技の封印を解く必要がありそうだ。
そしてもうひとつ、ゲーム製作の体験談、すなわち、このエッセイの執筆を思いついたのもこの頃である。もしかすると自分と同じように、ゲームを作りたいと思っている人はいるかもしれない。自分の体験が創作活動の一助になればよいと思ったのだ。
すると忘れた頃に不動産屋さんからの連絡。登記も済んで、月末には売主さんを交えての譲渡契約が可能との事。詳しい日程はこれから詰めていく事になるらしい。
月末! 里帰りする家はないのでお盆は取り立てて忙しいわけではないが、契約が完了すれば引越し作業が始まる。そうなるともうゲーム製作どころではない。
購入予定の家は前の住人の生活用品がそのまま残っており、普通なら業者に頼んで処分してもらうところを断り、浮いたお金をシロアリ防除やトイレのリフォームに充てた。
つまり、新居の片付けは自分でやらねばならない。家族がやってくれるので心配はないが、さすがに休日くらいは手伝わないとまずいだろ。それまでにゲーム製作の目処を立てておく必要がある。
そうとなればもう余裕はない。お盆明けに再びネットカフェに行き、そこで素材集めを完了させ、引越し作業に入る前にすべての工程を終えておく必要があった。
まだある。ゲームが完成に近付くにしたがい、ひとつの懸念が浮かび上がってきた。それはネタかぶりだ。フリーゲームの歴史は結構長い。すでに自分の作品と似たものがあるかもしれない。ゲームは似てなくてもネタがかぶってたりすることは充分ありうる。できればそれは避けたい事態だ。
前にアンタ何様? とばかりにテンプレを否定しないなんてご高説をぶったが、転向したわけではない。かぶりとテンプレは微妙に違う。テンプレはあくまで創作の手法だが、かぶりは完全な事故だ。パクリと言われても文句は言えない。小説を書いてるときも、似た表現をどこかで見たらその部分は削るか変えるように心掛けているくらいだ。これがゲームだと深刻さの度合いが違う。
そこで、次回の素材集めは検証のためにノベルのフリーゲームも多めに落す事にした。




