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Page06 † 合流

勢いよく廊下に飛び出したゆいは霧に圧倒された。


そして、今まで感じたことのないような恐怖が急に襲いかかってきた。


『赤い霧』はさっきより濃く、深くなっている。


不気味な『赤い霧』は全てを飲みこもうと待ち構えているようだ。


ゆいは自分の位置を確認しながら、壁伝いに廊下を進んでいく。



ひめが店から出て行って…足音が聞こえたのは確か中央階段がある方向からだったはずだ。


店から中央階段までの距離は約15m。


1歩1歩確かめながら慎重に進む。



何分経っただろうか。


張りつめた緊張感の中、ゆいはやっと中央階段にたどりついた。


ゆっくり進んでいたためか、全神経が針のように尖ってたためか、時間の感覚が無いように感じられた。


「ふぅ…」


ゆいは小さくため息をつき、これから上る階段を見つめた。


だが視界はせまく、最初の1,2段しか見ることはできない。


ゆいは手すりに手を掛け、慎重に1歩を踏み出す。



まずは1段…


そして、2段…3段…と順調に足を進めていく。



本当はひめのことが心配で仕方がなかったが、ここで大きな物音をたてて階段を走って上がるほどゆいは


愚かではない。


ゆいも霧の中に入った瞬間から感じていたのだ。



ここには、何かがいると。


そして、ひめはその何かの存在に気づいていたであろう事を。


ゆいは頭の中に浮かび上がってくる疑問を無理やり静め、今直面している出来事に意識を集中させた。



ゆいは再び階段を上がっていく。



半分くらいまでたどり着いた時だった。


足元に集中していたゆいは前方から近づいてくるものの気配に気づかなかった。



手すりを握る手に力を込め、階段をまた1段上がろうと足を動かした瞬間。


ゆいは何かにぶつかるのを感じた。


霧の中から現れた何かはぶつかったゆいを捕らえようとゆいの腕を強く掴もうとする。




「キャアァァァァァァ――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!」


ゆいは突然のことにパニックを起こし、無意識のうちに悲鳴を上げていた。


そして捕まった手を離そうと、もがく。


もう1方の自由な手を手すりから離し、相手の腹部に強烈な1撃を叩き込む。


「ぐっ…」


ゆいの1撃を受けた何かはその場に倒れこんだ。



ゆいは肩で息をしながら今起こったことを頭の中で整理する。


ゆいの前に倒れこんだ何かは腹部を抱え込み、苦痛に呻いている。


ゆいは自分を襲ってきたものの正体を確認しようとその場に片膝をついた。



襲ってきた何かの全体が見えると、ゆいは1瞬言葉を失った。





「……」


停止した思考回路を元に戻そうと、ゆいは襲ってきた何かに向かって話しかけた。


「……中野先生?何でここに…」






中野は腹部に手を当て、痛さに呻きながら呟く。


「おまえ……」



ゆいは自分のおかれている状況を認識し、中野を介抱しようと固まっていた体を動かした。


「あの…先生…すいませんでした……。」


申し訳なさそうにボソボソと謝罪の言葉を呟いたゆいに向かって中野は体を起こしながら話しかける。


「いいパンチだったな…。春日…ちょっと手を貸してくれ。」


ゆいは中野を支えながら起き上らせる。


「本当にすいませんでした…。」


「いや…そんなことはもういい…。


こんな状況だ。何が起こってもおかしくない。」


中野は真剣な顔つきでゆいを見た。


「先生はこの霧について何か知っているんですか?」


ゆいは少し期待を込めてせかすように中野に質問する。


「あぁ…。詳しいことは分からないが、今起こっていることなら少し知っている。


でも話すにはここは危険だ…。


霧のかかってない教室はあるか?」


「1つ…。あたし達がやってた店なら。」


「そうか…じゃあそこに…」


「でも!!


ひめが………。先生、ひめを探さなくちゃ…」


ひめは少し焦ったように訴える。


「ひめ…? 橘か。


橘がどうかしたのか?何かあったのか?クラスの皆はどうした…?!」


ゆいのただならない様子を見て中野も顔を曇らせる。


そして少し冷静に考えてから口を開いた。


「どっちにしろ事情を話すためには場所を移動しなくてはいけない。」


「はい……。」


ゆいも渋々同意し、2人は店に向かって少し急ぎ気味に歩いていった。




そんな2人を見ている何かがいるとは知らずに。

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