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Page05 † 勘

ひめはその場に立ち尽くしたまま、今クラスメイト達が出て行った扉を見つめていた。


体を動かそうとしても、神経が切り離されてしまったかのように、指1本動かない。


そんなひめの姿を見て心配したゆいは、状況を理解しようと必死だった。



「ひめ?!大丈夫?!」


必死に呼びかけるゆいの声もひめには届いていない。




…――止めることができなかった。


これから起こることを1人知りながらも、止めることができなかった。


ひめは後悔と罪悪感にすべてを飲みこまれそうになっていた。



霧の中に見えたあの影。


甲高い音はアレの鳴き声だったのだろうか…。




長い沈黙。


ゆいはひめを見つめ、ひめは自分の思いの中、考えを巡らせている。




2人の間の沈黙を切り裂いたのは廊下から響いてきた女子の悲鳴だった。





「今の何っ?!」


ゆいはひめに尋ねるが、ひめが答える様子はない。



ひめは何かに操られるように廊下の方へ足を動かしていた。



「ひめ…………?」


ひめの行動に不信感を抱いたゆいはひめの腕をつかんだ。


「やめて。来ないで。わたしに……触らないで。」


ひめが発したのは拒絶の言葉だった。


「ひめ…?


今廊下に出たら危ないって!!さっきの悲鳴聞いたでしょ?何があったのかも分からないのに!!」


「わたしには…わかる…。…行かなきゃ。」


ひめはそう言い放つとゆいの腕を払いのけ、1人廊下へと走って出て行った。




とり残されたゆいはその場に呆然と立っていた。


追いかけるにも恐怖で足が動かず、ただ上の階に上って行くように遠ざかるひめの足音を聞いていた。


気づけば校舎内は不思議なほどに静かになっていた。



やっと我が元へ帰ってきた思考回路を離すまいと、ゆいは近くにあった椅子に腰をかける。


冷静に考えなくてはならない…。


1人残された今、自分はどうするべきか。




さっき聞こえた悲鳴は確かにクラスメイトのものだった。


彼女の身に何があったのだろうか…。


それに、あの時のひめの表情。


ひめは何か分かっているみたいだった。


実際ひめは何かを求めて上の階へ行ってしまったのだから。



分からないことだらけだ。


でも、霧の中から聞こえた悲鳴…。


霧の中が危険だということは確かだ。


だとしたら…



「ひめ……………」





考えるより先に足が動いていた。


勢いよく椅子から立ち上がり、店の扉に向かって歩き出す。


だんだんと歩調は速くなり、扉にたどりつく頃には走っていた。


そして、扉を勢いよくあけ、『赤い霧』の中へとゆいは入って行った。



ひめの安否をだけを気にして。

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