Page02 † 学園祭
「ひ〜〜〜めっ!!」
歩いてる少女の後ろの方から声が聞こえた。
少女は声のした方を振り返り大きく手を振る。
「ゆい〜〜〜〜〜〜!!」
人ごみの中、ゆいは手を振っている少女に駆け寄り近くの教室に引っ張って連れていく。
星華学園学園祭。
県内でも有名な私立中学校の学園祭にはたくさんの人が来ていた。
この学園の生徒、保護者、さらには小学生や他の中学校の生徒まで。
橘 綾姫 -たちばな あやか-
星華学園の3年生。通称、ひめ。
春日 ゆい -かすが ゆい-
ひめと同じ星華学園の3年生。
「はぁー、すっごい人ごみ。暑〜い。」
ゆいは手でパタパタと首のあたりを扇ぎながら周りを見回す。
夏の昼過ぎ…学園祭でにぎわう校舎は、普段より数倍人口密度が高く、冷房も意味をなしていなかった。
人込みから逃げ、ゆい達が入った教室は天然石を展示・販売してる店だった。
廊下よりは人が少なく、窓があいているせいか多少涼しい。
ひめは廊下の人ごみを見つめ軽くため息をついた。
「ほんとだよ。ここまで混むなんて思ってなかったなぁ…。
そろそろ、お店交代の時間だし…。」
ひめは教室に備え付けてある時計を見上げながら言った。
「ほんとだ。あたしらが店番かぁ〜。」
ゆいもひめの視線をたどり時計を見上げる。
ひめ達のクラスは1階で喫茶店を開いていた。
店番を午前と午後に分け、ひめ達の担当は午後だった。
午前中は他の店を見たりして過ごしていた2人だが、さすがに店番をサボるわけにはいかない。
「さぁ〜ってと。そろそろ行きますか。」
窓の近くで風にあたっていたゆいが振り返って言った。
「そーだね。」
ひめも寄りかかっていた壁から背中をはがし制服のスカートを整える。
2人は並んで教室から出て行った。