イケメン有罪~探し物~
人々の賑わう街中でショッピングや
人気のカフェで見た目鮮やかなケーキを楽しむのもいいが。
近場でありながら自然を満喫できる公園を
二人で歩くゆっくりした時間もすばらしい。
歩くペースも普段より心なしか遅くすることで
彼女の顔も普段より穏やかになる。
こんな何気ない日常の一コマにさえ
安らぎと安心感を与えるこのイケメン力。
日常のストレスから解放された彼女は
足取りも軽く、危なっかしいほどふわふわと歩いている。
そんな彼女が急に不安げに慌て始めた。
どうやら化粧品の入ったポーチをどこかに置き忘れてしまったらしい、
財布などの貴重品とは違うようだが、
彼女にとっては大切なものだ。
こんな時に頼りがいがあってこそイケメン。
何、心配することはないさ
俺は彼女をなだめつつ
元来た道を二人でゆっくりと引き返す。
注意深くあたりを見渡し万が一にもどこかに落としてはいないか
を確認しながら彼女の様子にも気をかける。
しかし、大体の見当はついていた。
彼女の動作には常に気を配っていたはずだ、
小さなポーチを取り出すようなことはしていなかったし
もしそのような行動をとる機会があったとすれば、
公園の途中で一度トイレに寄ったときであろう。
目的のトイレの近くまで来た時
彼女もそのことに気が付いたようだ。
何かをひらめいたかのように、
にっこり笑って走り出した。
どうやら、使った場所を思い出したようだ、
これで一件落着かな。
そう思ってみたもののずいぶん遅いな、
どうやら見つからないらしい、
こういう時は一人で探すとなかなか見つからないものだ。
しかし、俺が一緒に探すわけにもいくまい。
この公園の近くに交番があったはずだ、
よし、俺は彼女にひと声かけて走り出した。
交番には都合よく婦警が一人いた。
これまでの事を手際よく説明するも
どんな形のポーチか色は何色かと矢継ぎ早に質問攻めにあう。
やはりここは、女性同士のほうが具体的にどういうものか伝わるのであろう。
それに、探すのを手伝ってもらって見つかれば面倒もない。
俺は府警の手を引き少しばかり強引に彼女の待つところまで連れて行く。
何やら言っていたが問題はあるまい。
待っていた彼女は、
事細かくどこで使ったとか、
どんな形のポーチだったとか説明しつつ
再び探索を始める。
もちろん俺もただ待っているだけではなく、
周りを探しつつ他になくした場所の候補に思案を巡らす。
しかし、見つからないらしい、
とりあえず遺失物届を出しておくことにするか
持ってきていたバインダーの書類に詳細を書き留めている。
しかし、彼女をしょんぼりさせたままでいる訳にはいかない
このままもう少しほかの場所を探しつつ
気分が晴れるようなデートを再開しよう。
おっとそうだ、見つかったとき連絡を入れないといけないかな。
『婦警さん、お名前と連絡先を教えてくれますか』
どんな時も感じの良い笑顔で話せてこそイケメン。
俺の問いかけに耳まで赤く染め
気まずそうな笑みを浮かべながら、
ちらちらと彼女を見ている。
俺の手の中に小さな紙きれを押し込むと、
逃げ出すかのように慌てて走り出した。
隠すように渡された小さな紙きれには、
名前と携帯の電話番号が書かれていた。
口を尖らせ別の方向に歩き出す彼女に
この連絡先は・・・と、説明するか、
いや、
ここは潔く、
謝りながらついて行こう。