「(続)まささん、アナリストになる」の巻
「さっきも言ったとおり、『対等』の関係を求める奴は、お互いが得になるよう取引する。なんでかというと、どちらかが一方的に得をする話をまとめても、次がなくなってしまうからだ。逆に互いが強い信頼感で結ばれてると、いったん自分が不利益を被っても、その苦労に相手が必ず報いてくれるという意識が生じる。欧米や日本が、それ以外の専制国家群に対し優位な立場に付けられたのは、いわばそれが根っこだよ」
「近代の話だよな」
「そうだね。たとえばの話だけど、戦時中、日本兵が信じられないほど頑強に戦ったのは、例え自分が戦死しても、その戦いぶりをお上が認めて残してきた家族に報いてくれると信じていたからだ。それが正しかったかどうかは別として、社会に対する信頼がそれだけあったってことさ。戦後日本だって、会社が自分らの人生を保証してくれると信じていたからこそ、企業戦士たちは滅私奉公してたんだから、間違っているとは思わないな」
「納得(モシャモシャ※肉食う音)」
「ところがだ。『上下』の関係を基本にする連中は、上の奴らが下の奴らに滅私奉公を強制しても、それに報いてくれるとは信じていないから、隙を見付けて手を抜こうとする。あたりまえだわな。誰だって無駄死にはしたくないし、ただ働きもしたくない。だから、労働の質が否が応にも低下する。そしてそれは、上が受け取る利益の量も左右するんだ。専制国家の兵士たちが、特に王朝末期、急激に劣化していくのがその証拠だな」
「(モシャモシャ※肉食う音)」
「でだ。中国や韓国は、いまだ『上下』の価値観に生きてる。取引ではなく駆け引きの世界で息してる。日本とは別の世界に暮らしてるんだ。連中は、なんとかして日本の上に立ちたいと思ってる。そうすれば、お人好しの日本をいいように働かせて、自分たちだけが得できると思ってる。日本がお人好しなのは、日本が『対等』の世界に生きてるからだ。なんとかして、自分も相手も得をするような間柄を築きたい。だからしばらくは、自分が損をしても相手に得を与えておこう。そうすれば、いつか相手もこちらに対して利益を与えてくれるようなるはずだ。そう、ずっとずっと信じてやってきたわけだ。福沢諭吉が聞いたら卒倒しかねない判断だがね」