「まささん、友人夫婦と歓談する」の巻
(ことが終わってしばらくののち、まささんは、友人であるX夫妻のディナーに招待されたのでありました)
「──とまあ、こんな具合になっちゃったわけなんだが」
「なんとまあ、まささんさんにしちゃあ、ずいぶんと軽率な話じゃないですか。らしくないですねェ」
「やっぱりそう思うか?」
「思うも何も、それ見え見えのハニートラップですよ。よもや、まささんさんともあろうひとが、ベッドの中での『愛してる』を真に受けちゃったりしたんですか?」
「だよなあ。誰が見たってそうなるよなあ。あんなうまい話が、俺みたいなのに転がってくるわけないもんなァ」
「そうですよ、まささんさん。あなたみたいな、容姿にも財政にも将来性にも欠けるオジサンが、いかにコリアンガールとはいえ、若い女の子に粉かけてもらえるわけないじゃないですか。あなたが書いてるような妄想爆発三文小説じゃあるまいし。きっちり目を冷まして、いいかげん現実を直視してください」
「喧嘩売っとんのか、こら!」
「まさかまさか。単なる事実の羅列ですよ。そんなに怒ることないじゃないですか」
「そうはっきり言われると、自分で自分が情けなくなるなァ……とほほ」
まささんと、ここの家長で元ラガーメンでもあるXくんが漫才みたいなやりとりをしているさなか、Xくんの奥さんであるBさんが、得意の牛すじ煮込みを持ってきてくれました。
「随分とまあエキサイトしてるじゃない。ふたりとも、まずはこれでも食べて落ち着きなさいって」
「とりあえずありがとう。でもさ、なんでボクの分には肉よりも薬味のほうがたくさん入ってるわけ?」
「そりゃ当然」
「そりゃ当然?」
「喧嘩売ってるからに決まってるじゃないですか。いつぞやウチの旦那に余計なこと吹き込もうとした件、あたしは忘れちゃいませんからね。ざんねんでした~(ニコリ)」
「あ……そう」