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臆病者の幸福  作者:
3/3

出会い 下

「大丈夫ですか?」

「うん、だいじょうぶ…」

綺麗な瞳に涙を溜めながらも、それを溢さんと痛みに堪える美少女。とても庇護欲が掻き立てられます。転んだ拍子に美少女の顔や手足についた泥を拭うためにポケットからハンカチを取り出す。洗ってから一回も使ってないからキレイだよ!そのハンカチを美少女の顔に近づけると

「いい、です…」

ぷいっと顔をそむけられてしまった。それに合わせて髪がサラリと揺れる。その仕草も可愛い、じゃなくて、いや可愛いよ?でも今は悶えてる場合じゃない。泥がいつまでも顔についてたら気持ち悪いだろうに、このハンカチがダメな理由はなんだ。安物だからか?でも高いハンカチなんて持ってないしなぁ。今お金ないし。はっ もしや柄が嫌なのか!?このファンシーな動物が描かれた物をいい歳したやつが使うなよみたいな!?これを選んだのは安いからだから。動物もちょっといいなって思ったけど一番の理由は安いからだから、引かないで!いや、待てよ。もしかして…

「迷惑でしたか?」

初対面の人のハンカチなんて嫌だよね。私のセンスに引いた訳ではなく!

「ううん、全然迷惑じゃないよ!」

目を丸くして、パタパタと慌てたように両手を振る。仕草の一つ一つが愛らしい。

「そうじゃなくて、ハンカチが汚れちゃうから…」

何この子めっちゃいい子だ。

「そんなこと気にしなくていいですよ」

あなたの為ならこんなハンカチ何にでも使えます。そっと美少女の顔にあて、泥を拭う。その拍子に私の手が美少女の頬に触れた。べっ別に頬っぺたに触りたいから泥を拭っているわけじゃないからねっ。ちょっとした偶然です。因みに美少女の頬はスベスベプニプニツルっとしていた。素晴らしい


「えっと、ありがとう」

「そんなお礼を言われるほどではないですよ」

むしろお礼を言うのはこちらのほうだ。

「んーん。ホントは汚れてたのちょっと嫌だったの。だからありがとう」

ペコリと頭を下げた美少女はそう言ってからはにかんだ。その微笑みは花も恥じらうといった言葉がふさわしい。いやそれ以上だ。さらにこちらに引っ越す前の近所の子ども達にはない謙虚さや素直さが美少女にはあった。

近所の子ども達は高校生の私に向かってよく「ババアババア」と言ってきた。それを大人として笑顔でスルーしてたら、

「ババアが一人で笑ってるぜ!変質者だー!!」

と囃し立ててきた。一億歩譲ってババアはいいが変質者はやめろ。欠片もそんな素質のない真面目な私に対して失礼だ。


「でも、お礼出来そうなもの何もないの。ごめんなさい」

私は確信した。天使はここにおったんや。美少女からジョブチェンジした天使は申し訳なさそうに謝る。そんなこと気にしなくていのに、律儀だなぁ。だったら、

「では、お礼の代わりにあなたの名前を教えてもらっていいですか?」

「お名前言うの忘れてた!月城ユニっていうの。ユニって呼んでね。お姉ちゃん!」

名前まで可愛らしく、点数のつけられない笑顔。そして『お姉ちゃん』という言葉が頭の中で繰り返される。はいっ、私がお姉ちゃんだよ!

「ユニちゃんですね。雨が止むまでもう少し時間がかかりそうです。その間よかったら私とお話してくれませんか?」

「うん。いいよ!」

それでは雨宿り中に天使と仲良くなろうぜ、略してアテナ作戦を開始します。このアテナというのは天使なユニちゃんかけてある作戦名だ。ネーミングセンスの良さがわかっちゃうね。…あれ?アテナって女神の名前だったっけ?


しばらくして雨が上がった時、天使を家まで送り届けることになった。これは作戦の成功とみていいだろう。月城家にはユニちゃんの父、母、兄がいたけど、皆驚くほど美人さん方だった。美形は遺伝するものらしい。羨ましいかぎりである。そして自分の顔と親戚の顔を思い出す。…ドンマイ私。でも3歳になる従妹は可愛かったし!いや、あの子は嫁いできたお嫁さん似だったな…。


月城家を訪れたとき、自分より年下の子とは普通に話せても、年上の人相手にはテンパってしまう私はひとまず拝んだ。この美形に少しはあやかれますように!変な目で見られた。あっユニちゃんは真似しなくていいんだよ…。


遺伝による格差社会を知った私は、この日天使に出会い、美形一家とお近づきになることになった。


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