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ヘタレな王とロリな騎士  作者: sin_crow
第零章 始まる前の話
2/5

門番の怱忙

祭りが近いせいで、都市の門には人がズラズラと列を作っていた。

毎年この時期は、後から後から人が来て途絶えることがないものだから、いい加減嫌になる。

門番がため息を吐いた、その時。


その奇妙な二人組は現れた。


少女の方は、人形のように可愛らしかった。腰につけた短剣が少し無骨でこそあったが、それ以外は、御伽噺から抜け出して来たような容貌だった。


問題は、もう一人の男の方だ。

なんというか、だらしない。

みすぼらしい。

長身を屈めた猫背のせいだろうか。

適当に切ったのであろうボサボサの髪のせいだろうか。

或いはその髪で片目を隠された顔のビクついた表情のせいか。


男の方から漂う何とも言えない残念感と、少女が醸し出す優雅な雰囲気が変に調和している。


どういう関係なのか、と思いながら書類を受け取ってザッと目を通す。


「名と年齢の確認を」

「アイリス・レ・サイロス、8歳」


先に答えたのは少女の方だった。

遅れて男が、オドオドと口を開く。


「お、俺はその、ディレク・セレストリ、16歳でふっ!」


……噛んだ。

気まずそうに目をそらして、一部繰り返し(リピート)


「……16歳、です」

「ぶふっ、ああ、書類通りだな」


無かったことにしてくれる辺り、この門番はいい人のようだった。

笑いを堪えながら、提出された書類にもう一度目をやる。


「ぶっ……ん? 目的は、大会への出場?」


またジロリと見れば、男の目線が面白いくらいに泳ぐ。なんともまぁ、情けない。

剣を背負ってこそいるが、この男が戦えるのだろうか。

なぁ、と少女の声がしてハッとする。


「何だ?」

「大会で優勝すれば、望むもの何でも与えられると言うのは本当か」

「ん? ああ……限度はあるが」


そうか、と少女は顎に手を当てた。

この少女もずいぶんと古風な話し方をするな、と門番は思った。


「何か欲しいものが?」

「まぁな」


一応、男の方にも視線を合わせて聞いたのだが、答えたのは少女だけだった。

よく分からんが、それなら——


「隣の男に頑張ってもらうしかないな」


戦えそうには見えないが。苦笑しながらそう言うと、


「は?」


少女は意味が分からないと首を傾げた。

……あれ?

怒りの混じった声で、少女は言う。


「何を勘違いされているのか知らんが……」



「前衛は、私の方だぞ?」







ふぅ、とため息が出た。反対側を守っていた同僚が近寄って来て、ボソボソと囁く。


「大丈夫、なんですか。あの変な二人組を通しちゃって……」

「いやまあ、問題はないだろう。特にあんな挙動不審、間者スパイなはずもないからな」

「はは、確かに。頼まれたって雇いたくないですね」

「ああ……」


しかしそれにしても、あいつらは一体何者だったのだろうか?

門番はただただ、首をひねった。

怱忙…いそがしいこと。

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