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第4話 俺的には何だか色々不審なアレがあったりなかったり。

 結局、目を醒まさなかった彼女かっこびみょーに正体不明かっことじをぶって森を出たのだが。

 この森はどうやら神社にある鎮守の森の大規模な物だったらしく、壮麗な大理石造りのパルテノン神殿モドキが森の正面に建っていた。

 石の文明と木の文明が同居している奇妙な光景に、やはり地球の文明じゃないのだと実感した。

 似ているとしたら、アンコールワット?

 幸い警備員みたいなのはいなかったので町の方へと歩いてったんだが、人一人ってのはそうとう『重い』。

 女の子にこんな事を言うとブン殴られるかもだが、少なくともそはらなら確実に殴る、で、身長160センチに骨やら筋肉やら内臓やらが詰まっているのだ、軽い訳がない。

 ましてや気絶? して脱力しているから重い重い、いやこれは生命の重さなのだ、生命の輝きなのだぁ。

 強がり言っても背中にのし掛かる重さは軽くなる事はないのだが。

 当たってるし、むふ、むふふ。

 おっといけねえ顔がニヤケてむふふふふ、いや、別に役得だなとか考えてないし。

 陽の暮れた町中には人影が驚くほどなく、何処の地方都市の午後六時だよと心の中で突っ込みを入れてしまった。

 だが、それも当然なんだろうか。

 日本でも江戸時代なんかではお天道様が昇っている間だが一般庶民の外での活動時間だったと聞いているし。

 ざっと見た所、町中の道には電気の街灯はない、魔法の街灯も篝火もない。

 二つの月が放つとても明るい月明かりのお陰で足元ははっきり見えているのだが、道沿いに並ぶ家々の窓から明かりはこぼれていない。

 と云うより、窓ガラスが見当たらない。

 全部木で出来た頑丈な扉みたいな物しか見当たらない。

 これは防犯目的か、それともガラス窓を作る技術がないのか。

 ここが異世界であり、その技術がないのであれば飯の種になる、そう思ったのも無理はない事だと思う。

 あれは確か、溶かした鉛の槽の上に液状に溶かしたガラスを流し込んで作る筈。水銀だっけ?

 残念ながらガラスの作り方が分かんないんだけどね。

 しかし、異世界で科学技術かぁ、定番と言えば定番だけど、定番は効果が高いから定番なんであって、決して蔑ろにして良いものじゃないよね。

 良し、ならば異世界チート技術モノだ。

 出来れば内政モノにまで発展させて行きたい。

 あの夢、あれが正夢なんだったら、今日は西暦2020年の東京オリンピック2の年、つまりあの夢の舞台開始と同じ年。

 あれに出てきた長田陽介って云う男の人も雷力石って云う異世界物資を利用して成り上がっていたじゃないか。

 剣とかは作れないけど、簡単な鉄砲だったら鍛冶師かギルドの人に相談して原始的な先込式の物を試作して貰うとか。

 こんな事もあろうかと、義手には色々とデーターやテスター機能を内蔵してきたんだし。

 俗に言うチート能力とか神様に貰った特殊能力とか無いけど、と言うか神様に会ってすらいないけど!

 うん、やれるやれる。

 こんな事を考えながら歩いていたら、いつの間にか町外れの方まで歩いてきていた。

 町並みが途切れて草地が広がっているんだけど、そこから1キロメートル先くらいに小川か水濠みずぼりに水が流れていて、その向こうに木造の塀が立っていた。

 城塞都市って訳じゃないだろうけど、やはり外敵とか多い世界なのかな。

 だとしたら都市から離れるのは拙い筈。

 ここいら辺で状況整理も兼ねて休息するとしようかな。

 道から離れて草地に生えた木立の陰に彼女を下ろして、俺も座った。

 ああ、重かった。

 すーすーと寝息を立てている推定幼なじみの少女を横に、辺りを警戒しながら俺は自分の持ち物を確認する。

 俺はオタクである。

 それもアニメ関係だけではなくて、簡単な電気回路の自作にも手を出している。

 きっかけは小さい頃に父さんが見せてくれた電気ブロックと云う教育玩具だった。

 電気回路が内蔵されたブロックを図の通りに並べるだけでラジオになったりライトになったりラブテスターになったり、目的の電気回路に自由自在に組み替える事が出来たんだ。

 だから凄く引き込まれた。

 父さんに強請ねだって誕生日プレゼントにベーシックセットを買って貰って、クリスマスプレゼントにスピーカーとメーターのセットを買って貰って、その後何かある度に増加電気ブロックを買って貰って、挙げ句の果てにはただのスペーサーに電気回路を自作で詰め込んで作ったりした。

 いつの間にか持っていたバックパックの中にはそれらが全部入っていた。

 これはちょっとメタ的な発言になるんだけど、この文章はこの出来事が起きてから数年後に当時の日記や手記から本人が記憶で補完しながら一人称で再構成したものです。

 よって未来ではこうなっていると云う文章が入りますが、未来が見えるとか云う予言者的な妄想ではありませんので宜しく。

 その上で、この電気ブロックが俺のこの世界での大きな力になった事を記して置きます。

 魔法的な意味で。

 電気ブロック一式の他にも携帯電話とタブレットPC、それらの充電用に充電池と充電装置、それにソーラー発電用に折り畳み式の太陽電池やテスターや電気工具、電線や接点、端子一式が入っていたのには驚いた。

 何気に自分で買った覚えのない物まで入っている。

 これは自然現象で異世界へと移動したんじゃないのかも。何者かの作為の匂いを感じる。

 まぁ、寝る前に『異世界トリップして~云々』云っている俺としては歓迎出来るシチュエーションな訳なんだけど。

 で、突然異世界と思しき場所に跳ばされていきなり重量物の運搬作業に従事させられた俺としては、せっかく座って落ち着いたんだから何か飲食物が欲し~いな。

 バックパックの中に何か入っていないかとガサゴソと手探りで探っていると、指先に何か当たった。

 これは?

 おっと徹夜でデスクワークの多い人達御用達の一品、黄色い箱のジュールメイトのフルーツ味と缶入り液状ジュールメイトじゃないですか。

 昔、おたふく風邪で喉が腫れて、飲食すると激痛が走って何も口に入れられなくなった時に唯一腫れに染みないで飲めたのがこいつだったなあ、って、感じだが、ふむ、さっきまでこれはバックパックの中に無かった様な気がするんだけど。

 気のせいかな?

 神様チートで欲しい物が手に入る鞄とか定番、じゃないな。


 取り敢えず明るくなるまで周りに注意しつつ、俺は夜が明けるまでその場で待機する事にした。

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