水滴
深夜1時、静まりかえった部屋にトン、トン、と何かが屋根を打つ音が響いている。
「雪が溶けて、水滴が落ちているのかしら」
部屋の隅に置かれたベッドの上で、毛布に包まっている彼女に、そんな興味が存在しているのかはわからない。
部屋にはただ彼女の呼吸と屋根からの音があるのみだ。
あなたは勿論彼女のことを知っている。
何故か?単純にその姿を自身の瞳に写したことがあるからだ。
何処でだろうか?あなたは思い出すために記憶の中で探し物をする。右か、左か。手前か、奥か。あなたは徐々にもどかしくなる。
不意に目の片隅で何かが光る。
「見つけた!」
心の叫びをあげると同時に、鮮明なイメージが広がっていく。何故か少し懐かしい気分になって呟く。
「あぁ、そうか…」
何者かの視線が去ったことを彼女は知らない。いや、知っていても彼女にとってそれは価値を見出すに値しなかったのかもしれない。
どちらにせよ、彼女は毛布に包まってベッドに横たわっているままだ。
その風景はまるで絵画のようである。1つ異なる点があるとすれば、それは水滴の音に他ならない。
ただ、その風景はとても美しい。
「あれは、私か。」