闇の終焉(2)
「ヌーンの片割れは生きていたのね」
ヒナタは彼の無事が嬉しかった。ボルトが話したことが真実なら、彼はタギと戦い機械に捕らわれた。ヒナタは彼を殺した罪から一つ救われたのだ。
「おいおい、泣くなよ。泣き虫ヒナタ。いい加減、大人になれよ。俺はいつまでも子守なんて出来ないぞ」
その声も、その悪態も、全てヒナタが知るもので息を呑んだ。思わずヒナタは腰に下げた小さな機械を手にとって覗いた。しかし、ボルトだったものが動く様子はない。
「ヒナタ、こっち、こっち」
声の方を向くと、ヌーンを背負った男が笑っていた。
「ありがとな。俺を解放してくれて。あんたが持っているボルトは死んだよ。俺は機械じゃないし、そこにあるボルトとは別人だ。でも、あいつの記憶は俺の中にある。タギに敗れて、光を奪う機械に捕らわれた俺は、残された僅かな力で、己を止める鍵をその小さな機械に託した。俺の力を渡された事で、その機械にも自我が芽生えたのさ。確かに、あんたのボルトは死んだ。俺とそのボルトは別人だからな。でも、そのボルトの感情も希望も俺の中に生きている。そのボルトの最後の言葉、全部あんたに向けられたものだったぞ。泣き虫ヒナタ」
そして男はヌーンをそっと下ろした。
「そして、初めまして。俺が、ヌーンの片割れ。ラキアのボルトだ。四六時中、あんたと一緒いてやることは出来ないが、あんたの幸せを願っている。ついでに、アキラもな。そのボルトを、豊国まで逃がして感謝している。機械のボルトは自らを守る術を持っていない。守ってくれたのは、あんたたちだ。」
ヒナタをそっとエイジが抱き寄せてくれた。
――何泣いてんだよ。泣き虫ヒナタ。俺がそばにいてやるからな。
どこかでボルトの声が響いたような気がした。
「感動の場所に水を差して悪いけれどね、ボルト。タギをどうするつもりだい?」
リークが口にした。地に落ちた王は、力なく頭を垂れていた。
「リーク、彼もかつてはどこかの世界の守護者だったんだろ」
ボルトがタギに目を向けて言った。
「そうだね。以前俺が会ったとき、タギは守ろうとしていたよ。彼のいる世界をね。きっと、タギの力では守りきれなかったんだ」
ヒナタには、リークたちが何の話をしているのか分からない。確かなことは、彼らはヒナタたちが言う神に近しい存在だということだ。
「リーク、だったら俺たちの導く答えはハッキリしているよ。彼にも協力してもらうだけだ。暗闇の世界で一度滅びたこの世界を立て直すには、俺とヌーンの二人の力だけでは、少し心もとないからね」
直後、ヒナタは横から殺気を感じた。目を向ければエイジがタギに向けて銃を構えていた。
「その男が多くの命を奪ったんだろ。俺みたいな只の人間には、あんたたちの話の内容が少しも理解できないさ。でも、一つハッキリしていることがあるならば、そこにいるのはタギで、タギが多くの命を奪ったこと、そしてあんたたちがタギを救おうとしていることだ。そんなこと、許すこと出来ない。ここで神殺しになっても、俺はタギを撃つ」
エイジの目が、かつてないほど鋭い目になっていた。すると、ボルトが足を進め、エイジの銃口を掴んだ。




