闇の終焉(1)
空が完全に明るくなるまで一時間ほど、人々は空を見上げ続けた。歓声とも溜め息と言えない声が響いていた。青い空。電気が無くても、隣にいる人の顔が見える。これが、当然の事になると考えるだけで、ヒナタの胸は高鳴った。
「これからが始まりだ。暗闇の世界の間、世界は砂漠になってしまった。暗闇の世界に適応し、進化した闇の世界の生き物たちは滅びるだろう。光を取り戻しても、難題は積み重なっている。俺たちは、また生きるために戦わなくちゃいけないんだ」
エイジが真面目な表情で言うとアキラがげらげら笑い、エイジの頭をゴシゴシと撫でた。
「エイジも立派になったもんだ。よく、あの頑固親父が秘蔵っ子を都まで出したもんだ。お前がいれば、豊国だけでなく都も安泰だ。頼りにしているぞ」
「止めろよ、アキラ。もう、子供じゃないんだ」
アキラの手を振り払う、エイジの様子がどこか子供のようで、ヒナタはエイジが愛らしく見えた。
「リークも、元気になったみたいで良かったな。俺は嬉しかったよ。リークが塔の上で俺たちを信じていると言ってくれて……」
色白で華奢なリークが驚いたように目を見開き、そっと微笑んだ。光を取り戻して終わりではなく、ここから始まるのだ。
「ねえ、これからが大変……」
ヒナタが話していると突然それを遮られ、思わず息を呑んだ。見たことが無い男が、ヒナタの目の前に立っていたのだ。男は、美しい女性を背負っていた。ヒナタが驚いたのはそんなことではない。男は、タギを連れているのだ。力なく地に座っているタギの襟元を掴み、満足そうに笑っていた。
「ヒナタ、安心なさい。私が協力するわ。光を取り戻した世界に命が戻るようにね」
背負われた女性が口を開いた。その声はヌーンの声と同じだった。
「あなたは、七年前、手を斬りおとして逃げようとした私を助けようとしてくれた……」
女性は美しく微笑んだ。リークは本性が獣であり、仮の姿として人の姿を模っている。ヌーンも同じだと言っていた。彼女はヌーンなのだ。
「そうね、私は七年前、微かな希望を託してあなたを助けたわ。だって、強い意志で自らの手を斬りおとし、死に逝く奴隷の女性から託された赤子を抱えて、必死で生きようとしているあなたを見捨てることなんて出来ないでしょ」
ヌーンがそこにいる。ならば、男のことを考えるのは、ヒナタにとって容易かった。ヌーンを助けるのは、ヌーンの片割れだ。タギに敗れて、捕らわれの身となっていたヌーンの片割れが解放されたのだ。とても安堵した。




