光の世界(2)
落下の途中、暗い空を見上げると空に微かな明かりが見えた。黒い雲の間から差し込む、僅かな光。空の色が変っている。ヒナタはその空を見曲げた。
「太陽……」
不思議と、ヒナタの目から涙が溢れた。このまま地に落ちて死ぬだろうヒナタが、太陽の光に感動しているのだ。この光を見ることが出来ただけで、狩人ヒナタが豊国から都まで足を運んだ意味があるということだ。きっと、これで極寒の地豊国にも温もりが差し込むに違いないのだ。
「エイジ、空を見て」
同時にヒナタは腰に手を伸ばし、ベルトに下げた動かないボルトを叩いた。この太陽を、ボルトにも見て欲しかった。
「太陽はこんなにも美しいよ」
「確かに、ヒナタ。太陽はこんなにも美しいね。死ぬ前に、この光を見ることが出来たのなら、俺は満足だよ。きっと、豊国に残っている親父や兄や姉たちも、この光を見る。そして、皆を守ってくれる」
ヒナタとエイジは同じ光を同じ時に見ているのだ。
「エイジは豊国の王の息子なんでしょ。エイジが死んでしまったら、豊国が困るよね」
ヒナタはエイジに言った。ヒナタのこみ上げるエイジへの思いは変わらない。彼が豊国の王の息子であっても、無くても……。
「大丈夫。家業のことは兄や姉が何とかするさ。俺は気ままな末息子。だから自由だ。父が少し、悲しんでくれたら嬉しい。思うのは、それだけさ。自由だからリークと旅が出来て、ヒナタと出会えたから」
ヒナタはエイジと出会えた。もし、エイジがリークを連れて都へ行く覚悟を決めなければ、狩人のヒナタと王子のエイジが出会うことは無かっただろう。そう思うと、この旅が価値のあるように思えてきたのだ。




