光を取り戻すために(3)
接続口は自然と分かった。機械に近づき、覗き込む。同時に、ヒナタは息を呑んだ。
(壊すのか?)
タギの声がヒナタの脳裏に響いた。それは、闇を通じてヒナタに語りかけるタギの言葉。
(ボルトも、機械の中の存在も、壊すきか?)
機械の中には獣がいた。それは、ヌーンと同じ獣。
(ヌーンと共に世界を守り続けた片割れ。ヌーンを助けようと、守ろうとして私に敗れた弱き存在。――壊すのか?ボルトも、ヌーンの片割れも)
機械に捕らわれた獣。この獣がヌーンの片割れだ。片割れを失えば、ヌーンはどれほど悲しむだろうか。そして、ボルトを失えば、ヒナタはどうなってしまうのだろうか。
――構うな、ヒナタ。早く繋げ。俺の存在は既にタギに知られた。一刻の猶予もない。今もヌーンが戦い、リークの命が消えようとしている。もし、ヌーンが死ねば、ヌーンが守っている光の時代の命も植物も消える。光が戻ったところで何も意味がなくなるんだ。戦っている奴隷たちはどうなる?アサヒは?キョウたち反乱軍は?皆処刑されるぞ。ライトも同じだ。殺される。そして、暗闇の世界の希望は全て消える。ヒナタ、俺を繋げ。俺が世界を取り戻してやる。
ボルトが言い捨てた。二つの未来がここにある。このまま、ボルトを守るために接続しなければどうなるのか。もし、ボルトを壊すことになったらどうなるのか。ヒナタは何も決めることが出来ない。
(壊すのか!)
――早く繋げ!
ヒナタはわけが分からなくなった。何をすれば良いのか、ヒナタは分からない。
――ヒナタ、お前は一人じゃない。アキラがいるだろ。アサヒがいる。ライトがいる。そして、エイジもいる。七年前、暗闇の世界に一人ぼっちで取り残されて、泣いていたお前じゃない。じきに世界は光で包まれる。もう、一人で泣く子供じゃないんだ。
ボルトは続けた。
――さあ、ヒナタ。俺を繋げ。
全ての答えは分かっていたのだ。走馬灯のようによぎる思い出。嬉しい日も、哀しい日も、辛い日も、楽しい日も、いつもボルトが一緒にいてくれた。自分の手でボルトを壊す。一番大切な友人を、自分の手で壊す。とても恐ろしいことだった。
「ヒナタ、俺が一緒にいる。その罪も、業も、俺が一緒に背負う。ボルト、これからは俺がヒナタを守る。世界が暗闇だろうと、光の満ちた世界だろうと、豊国だろうと都だろうと、俺の覚悟は変わらない。ヒナタ、俺が一緒にいる」
ボルトの手がそっとヒナタの手を包んだ。傷を負ったエイジの手は力ないが、もう片方の手が強くヒナタの手を握っていた。エイジの手がとても大きく、温かく感じた。光を取り戻すために、光を手にするために、もう一度、ここに光を手にするために、ヒナタはボルトからコードを引き出した。
――エイジ、泣き虫ヒナタのこと任せたぞ。ヒナタ。いつまでも、笑っていろ。
それが、ヒナタが聞いたボルトの最後の言葉だった。




