光を取り戻すために(1)
闇に呑まれたヒナタがそこにいた。その時、ひらりとヒナタと闇の間に身を入れてきたのは獣だ。獣は美しい女性の姿を象り、闇を弾き飛ばした。ヒナタは何が生じたのか分からなかった。美しい女性の傍らには、エイジがいた。
「ここは私が食い止めるわ。あなたたちは二つ下の階に行きなさい。そこに、闇を作り出している機械があるから。機械が止まれば光が戻り、リークはタギを止めることが出来るの。お行きなさい。これまで戦わなかったのは、私が支えている命を守るため。でも、時が満たされた、さあ、ヒナタ。行きなさい」
どうしてヌーンが人の姿になったのか、ヒナタには状況が理解できない。唯一状況を理解しているだろうエイジが身を翻し、ヒナタの手を掴んだ。エイジに手首を掴まれ、引っ張られてもなかなかヒナタの足は動かない。目の前の理解しがたい状況にすくんでしまったのだ。
「しっかりするんだ、ヒナタ!」
エイジの強い声に叱咤され、ヒナタの足に力が入り始めた。
「ヌーン……。そして、お前も知っているぞ。お前は豊国の腹立たしい王の息子!お前が、お前がリークをここまで連れてきたんだな!」
タギが狂ったように叫んでいた。
「そうだよ、タギ。俺があんたに対し拒否を示し続けている豊国王の末の息子。何が悪い!豊国は覚悟を決めたのさ。リークという存在を信じたのさ。行くぞ、ヒナタ」
走り出したのは、美しい女性に言われたからでも、エイジに叱咤されたからでもない。その場から逃げ出したい一心だった。何も出来ない自分が情けなくて、逃げ出したのだ。これが最終決戦ならば、なんと情けない状況だろうか。ヒナタは何も出来ない。
――ヒナタ、お前はここにいる。お前しか出来ないことがあるんだ。さあ、機械のところへ俺を連れて行け。
逃げるように階段を駆け下りるヒナタを、ボルトが励ますように言った。




