ボルト(4)
そこは、少し広い場所だった。
――そう、ここで俺は戦った。タギが現れた頃だ。ここには、機械が埋まっていて、俺はタギを止めようとした。二度と、兵器をよみがえらせてはならない。でも、タギは強くて……。俺は、あいつを逃がすのが精一杯だった。二人とも死んでしまっては、意味が無いから。世界を守るには、どちらかが生きなくてはならないから。
ボルトは何かを思い出していた。
――あいつは泣いていた。俺は、退路を保つために戦って、そして捕らえられた。暗い、暗い箱に中に捕らえられて……。
ヒナタは腰から下げたボルトの話に聞き入っていた。それは、誰かのメモリーなのか、ボルトの記憶なのかヒナタに知る由は無いが、誰かがタギと戦ったことは事実だった。
「……ヒナタ、ここには何も無い。先へ、先へ進むんだ」
久しぶりに目覚めたリークが口を開いた。まるで、立ち止まるヒナタを励ますように。リークは眠っているに、辺りの状況を理解しているようだった。リークの言葉は絶大だ。ヒナタも、もちろんボルトも何も言い返すことなど出来ない。再びリークが眠りに落ちた後、ヒナタは足を進めていた。何も言わず、ただ先へ。闇のように深まる謎に飲み込まれないように、ヒナタは先へ進んだ。
階段を上り、ヒナタは地上へ上がった。そのまま、高い塔へと上り始めた。不思議なほど人影が少なく、遠くで黒軍たちの怒号が聞こえる。
眼下に広がる都の光。光の中で、人々は戦っている。奴隷たちの戦乱の様子は聞こえず、天空に突き刺さるような高い塔の上は気味の悪いほど静かだった。
――不気味だな。
ボルトが小さく呟いた。機械が不気味だと感じるなど変なことだ。けれども、ヒナタはボルトらしいと心の中で苦笑した。ヒナタが思うことを口にしてくれる。それがボルトだ。長い旅で、幾人もの人と出会い、そして分かれた。ボルトと二人。リークがいることを除けば、豊国で狩りをしていた時と何も変らない。暗闇の世界。ヒナタが生きる世界は、暗闇の世界だ。
「弱虫ボルト。大丈夫。私がついていてあげるからね」
ヒナタは思い切り嫌味を込めて言った。
――偉くなったもんだな。泣き虫ヒナタ。
ボルトが感心したように言うから、ヒナタは本当に泣きそうになった。泣きそうになるヒナタを支えたのは、背中に圧し掛かるリークの重みだった。




