ボルト(2)
――知らねえぞ。ヒナタ。
「気を使わなくて大丈夫」
ボルトはしばらく黙した後、答えた。
――俺は、ここに来たことがある。ここを走っていた。あれは、誰と一緒だったんだ?アキラじゃねえ。俺は、誰かと一緒だった。そこ、左に抜ける抜け道があるだろ。もう少し先、広くなったところで、俺は負けた。変だろ。機械の俺が、何を言っているんだって……。これが俺のメモリーなのか、誰かのメモリーを受け継いだのか分からない。それでも、俺はここを知っている。
ボルトが落ち着いた口調で話をした。ボルトは別人になってしまったかのように落ち着いている。
「それで、その先に行きたいの?」
アキラは言っていた。ボルトが鍵を握っていると。もし、ボルトが何かを知っているのなら、それを探る意味はある。
――可能ならな。七年前、きっと俺は何かを思い出したから、メモリーを消去された。もしかしたら、タギにとって都合の悪いことだったのかもな。
「それで、ボルトはどうしてアキラとの手元にあったわけ?そこのとこ、聞いたことが無かったんだよね」
ヒナタはボルトに尋ねた。ボルトは優れた機械だ。都から遠く離れた豊国では作ることが出来ない。第一、ボルトのように人語を操り、感情豊かに話す機械を作り出すことなど出来るのだろうか。
――言っていなかったか?俺はライトの所有物。歴代のライトをずっと知っている。それが、あの偏屈ライトの時代だ。ヒナタもあっただろ。あの頑固爺。あいつには、多くの子供がいた。全員、捨て子だから血の繋がりは無いが、奴は子供たちを育てて知識を与えた。結局、末の息子がライトの名を継いだが、その息子の一人がアキラだったのさ。アキラは電気の知識より身体が動くタイプだったからな、ライトに不向きで豊国という過酷な国に行き、俺はそれについていった。だから、俺は泣き虫ヒナタの相棒になったのさ。きっと、俺が作られる前に、このメモリーは仕組まれたんだろな。
「アキラがライトの息子?」
ヒナタは父の真実に戸惑った。




