都の奴隷(5)
アキラのいるという場所へ向かう途中、アサヒがキエに尋ねた言葉をヒナタは聞き逃さなかった。
「七年前、私に子供を託して、逃げる手助けをしてくれたあの女性はどうなったの?」
キエは抑揚の無い声で答えた。
「殺されました。わが子を逃がすために、奴隷の逃亡に手を貸したと……。それで、あの子供は……」
「元気よ。命がけで逃がした母のことは覚えていないけれど」
「それで良いのです。こんな地獄、忘れた方が良い」
ヒナタは何も聞かなかったことにした。カシのことはアサヒが考えるべきだ。
暗闇の世界の闇よりも深く重い闇。奈落の底へ続くような深い穴の底をキエは覗き込んだ。
「この底にアキラがいる。アサヒが逃げ出した後、タギの手によって突き落とされた。それから七年。アキラはこの底で生き続けている。我らが出来るのは、僅かな食事を底に投げ落とすことだけ。生きているという証に時々岩を叩く音がする。タギはアキラが死んだと思っている。ここにある道具ではアキラを引きずりだすことも出来ず、我らは手をこまねくだけ」
すると、アサヒは微笑んだ。
「アキラと話すわ」
言うと、アサヒは小さな機械を穴の中へ投げ込んだ。
「ヒナタ、ボルトを貸して」
ヒナタはアサヒが何をしようとしているのか分からなかった。言われるがままにボルトをアサヒに手渡すと、アサヒはボルトに言った。
「ボルト、1745で通信をして。もちろん、他に電波を拾われないように、あなたが注意するのよ」
――まったく、注文が多いもんだ。通信設定開始。1745に調整終了。端末検索開始。探知終了。トランシーバー状態にて通信開始する。
しばらく黙して、ボルトは口を開いた。
――おーい。アキラ、聞こえるか?
直後、ボルトの画面の中に、汚れた髭だらけの痩せた男が映った。




