都の奴隷(3)
息を潜めて、ヒナタたちは隠れ続けた。その間に、三人の奴隷が倒れて、山に積み上げられた。ここでは、命が物のように扱われる。温もりがあって、明かりがあるのに、闇の中で凍える豊国の方が命は精一杯に花開いている。命は自分の物。誰にも侵略されることのない、唯一の場所。
「少し、眠りなさい」
アサヒが静かに囁いたときには、ヒナタは既に眠りに落ちかけていた。緊張と、疲労と、背中に感じるリークの温もりがヒナタを眠りに導いていた。リークが一緒だと安心できるのは、リークが持っている不思議な力のためかもしれない。
揺り起こされて、ヒナタは目を覚ました。ほんの数十分なのに、ヒナタはずいぶんと長い時間眠ったような気がした。目覚めると、警戒の濃い目で前を見ていた。
「ヒナタ、そろそろ行きましょう」
アサヒの視線の先には、労働を終えて入れ替わっている奴隷たちがいた。
「昔と変わらない。労働が終わるのは二十二時。まず、奴隷と接触して、アキラの居所を探す。アキラと会えれば、今の状況が分かるから」
アサヒは柵を揺らして外した。奴隷達は、死体の山の間を、足を引きずりながら歩き帰っていった。一瞬の隙。その隙を見計らって、ヒナタとアサヒは奴隷の波に入っていった。奴隷達は周りの事に頓着しないのか、突如現れた二人組みの女に対しても、無感情な目を向けている。気づいていないのは彼らは疲弊しているから。隠れている間に体に砂をつけ、粗末な布を被り可能な限り奴隷たちと一体なるよう気を配っていた。ヒナタの隣の奴隷が足を取られ、大きくふらついた。ふらついた拍子に、奴隷はリークに被せていた布を剥ぎ取った。
――零れ落ちる光。
暗い穴の中。闇が支配しているこの空間。リークの薄い金色の髪。光が闇の中に零れ落ちる。リークは昏々と眠っているが、彼自身が持っている光が消えることは無い。
「光……」
足を取られた奴隷が呟いた。その声に反応し、他の奴隷が足を止め始めた。奴隷たちがヒナタたちに手を伸ばした。そして、何かを欲するかのように、リークを掴み始めた。
「離して!」
ヒナタは言った。言い知れぬ恐怖がヒナタを突き動かしたのだ。奴隷たちは死人にように動いている。感情の無い目。表情の乏しい顔。骨と皮の身体。地獄の中で生きている人たちを、ヒナタは人と思えなかったのだ。奴隷たちの流れが止まり、ヒナタたちを中心に集まり始めた。監視の黒軍は何が生じたのか気づいていない。遠くで、奴隷たちを急かしている。




