都の奴隷(2)
突然、アサヒが足を止め、ヒナタはアサヒの背中にぶつかり立ち止まった。
「ヒナタ、ここを覗いて」
道は直径三十センチほどの穴で終わっており、穴には頑丈な鉄格子がはめられていた。穴からは光が漏れ、先から声が聞こえた。怒号と、悲鳴と、けたたましい音。ヒナタはアサヒの横から穴を覗いた。
地獄。
この世の地獄が広がっていた。足かせをつけられた痩せた人たち。積み上げられた死体。穴を掘る者、何かを運ぶ者、歯車を回す者、鞭を打たれながら働く人々。ヒナタが見ている間にも、人が一人倒れた。倒れた人を、足枷をつけられた人が二人運び、死体の山へと投げた。こうやって、積み上げられた死体の山は底が見えない。
「昔と同じなら、死体は一週間に一度片付けられる。それだけここでは人が死ぬのよ」
その言葉にヒナタは愕然とした。アキラが囚われたのは七年前。生きている可能性は極端に低い。
「アサヒもここに囚われていたの?」
ここは地獄だ。七年前、当時のアサヒは今のヒナタと同じ年齢。ここでどうやって生き残り、どのようにして逃げたのか。
「七年前にね」
ヒナタはずっと疑問に思っていたことを尋ねた。
「アサヒはどうやって、ここから逃げたの?もしかしたら、アキラも同じ方法で逃げたかも……」
アキラが生きていると信じたい。ヒナタが祈るような気持ちで探した一つの希望の糸。
「ヒナタ。それは難しい。私が逃げ延びたのは、執念と偶然。――それよりもヒナタ。前を見て。監視の黒軍は三人。あちらと、あちら。そもそも、奴隷達は足枷をつけられているから逃げられないから、さほどの監視は必要ないでしょうね。少しここで待ちましょう。昔と同じなら、あと数時間後に隙が生じるはずだから」
アサヒはヒナタの頭を軽く撫でた。
――お子様ヒナタ。寂しいのは分かるが、嘆くなよ。一緒にいてやるからな。
素直じゃないボルトの不器用な励ましだった。




