都の奴隷(1)
アサヒが先に突き進んだ。柵をなぎ倒し、止めようとする黒軍たちを横目にアサヒは時速百キロ以上の猛スピードで駆け抜けたのだ。ヒナタはアサヒの背を追いかけ、黒軍たちが銃の引き金を引くまもなくヒナタたちは駆け抜け、暗い地下へともぐっていった。
地下へともぐると同時に、息が詰まるように重苦しさをヒナタは感じた。けたたましくサイレンが鳴り響き、黒軍たちは血眼になってヒナタたちを探している。道は狭く、ガスがこもり、大地に掘られた道は、進むに連れて洞窟のようになってきた。悪路が続き、灯されている電気も弱い光だ。都の中は闇よりも光が強かったが、この場所は光よりも闇が濃い。
――ヒナタ、探すぞ。奴隷達を。
ボルトが言い、ヒナタはボルトをバイクに接続した。狭い悪路を時速百キロで駆け抜ける。ハンドル操作一つのミスで命を失いかねない。
――ナビゲーションシステム始動。生体反応探索。周辺五キロ探索終了まで三十秒。二十五、二十……
ボルトがカウントダウンを始めた。その間にもヒナタたちは地下へもぐり続けている。この近くに父アキラがいるかもしれない。そう思うだけで、ヒナタは胸が高鳴った。鳴り響くバイクのモーター音。そして、ヒナタの心臓。
――見つけた。一キロ先に六十の生体反応あり。黒軍の可能性は否定できないが、ナビゲーションを開始する。
ボルトがなれた口でナビゲーションを開始し、ヒナタはハンドルを握り締めた。
ボルトのナビゲーションに従い、先へ進み、しばらくしてアサヒがゆっくりと速度を落とし、ヒナタもバイクを止めた。
「どうしたの?アサヒ」
ヒナタが尋ねると、アサヒは苦笑した。
「ここ、知っている。タギの奴、かつての牢獄をそのまま移転したみたいね。壁の亀裂も染みも見覚えがある。そうなると、こっち。バイクを残して行きましょう」
ヒナタはアサヒの言うとおり、バイクを降り、リークを背負いなおした。力ないリークは、まるで死んでいるようで、触れた背中に響く微かな心音と、耳元で響く呼吸音だけだった。
「リーク、もう少しで着くからね」
リークに聞こえるか分からないが、ヒナタはリークに語りかけた。この声がリークに聞こえるように願って。
小さな隙間を縫うように、ヒナタたちは先へ進んだ。人一人が通るのに精一杯の、迷路のように入り組んだ道は、右へ左へ、上へ下へと入り組み、方向感覚を狂わせた。同じ闇でも、地上の闇と地下の闇は違うとまざまざと実感させられる闇の濃さだった。狭い空間に反響する足音と呼吸音。音を立てないように細心の注意をしているのに、異様なほどに音が響く。ヒナタは前を見ずに、アサヒの足元だけを見続けた。この先にアキラがいるかもしれない。それは希望であり恐怖でもあった。もし、アキラの命が既に失われていたら、ヒナタは深い絶望の闇に叩き落されることは確実だから。




