闇の都(8)
ヒナタたちの前を何台もの車が連なって走っていた。横に広がる看板の明かりやネオン。それは、ヒナタが狩り場にしている廃墟や遺跡が現代まで形を保っているのだ。ヒナタはアクセルを吹かし、アサヒの隣に並んだ。
「アサヒ、ここからどこへ行くの?」
風が頬を撫で、耳元で渦巻いている。大声で叫んでも、なかなか声が届かない。アサヒば片腕運転でバランスを取りながら、ヒナタを見つめ微笑んだ。
「さあ」
短い言葉がアサヒの返答であり、ヒナタは息を飲んだ。全ての頼りはアサヒであり、ヒナタはアサヒの後を追う事しか出来ない。アサヒがヒナタを導き、アキラの元へ案内してくれる。
「さあ、ってアサヒ。今、どこへ向かっているの!」
バイクは風を切って先へ進んでいる。どこへ向かうのか、当てもなく進んでいるというのだ。アサヒは何も答えなかった。
「ねえ、アサヒ!聞いているの!」
ヒナタは叫んだ。
「とりあえず、タギのいる塔へと」
アサヒは一つ息を吐いて言った。
「七年前、都についた私たちを導いたのは、他でもないボルトよ。ボルト、そろそろ、私たちを導いてくれない?――みんなとはぐれて、リークと二人でライトの元を目指している道中、眠ってばかりのリークと数度話をした。リークはボルトが鍵を握っていると話したわ。確かに、七年前もタギはボルトを執拗に狙っていた。そうでしょ、ボルト」
ヒナタはアサヒの言葉を耳にし、戸惑った。ボルトはコンピューターだ。確かに、コンピューターとは思えぬほど生き物らしく、それは時に憎らしいほどだ。ボルトが鍵を握る。それを知ると、今まで身近に感じていたボルトが急に遠い存在のように思えた。
――俺に振るなよ。無茶振りだな。でも、塔はあっちで正しいだろうよ。
ボルトはいつもと同じ口調で、いつもと同じように答えた。ヒナタは灯りの先を見た。そこは、暗闇の塔のようだ。大きな建物なのに、光が漏れていない。だから、暗闇が聳え立つように見えるのだ。
タギの塔は近づけばその大きさに萎縮するほどだ。道路は入り口に伸びているが、入り口と思われる場所には検問が敷かれていた。容易く進入させないということだろう。
「どうやって入るの?」
ヒナタはバイクを走らせながらアサヒに尋ねた。
――正面から突っ切れ!
ボルトが叫び、アサヒがスピードを上げ、ヒナタはアサヒの後を追った。黒軍たちが暴走する二台のバイクを止めようと柵を出したが、ヒナタたちは狩人だ。道のない荒野を、バイクを頼りに獲物を追い続ける。バイクはヒナタたちにとって足であり、生きるための術なのだ。障害があっても、止まることはしない。ただ前へ、前へ。先へ、先へ。目標の場所へ突き進むだけ。




