闇の都(3)
川の入り口は金属の柵で閉じられていたが、あまり手入れがされていないらしい。錆びや腐食が見られた。
「水に浸かっているところは特に痛んでいるから、七年前と変わらない。行こうか」
アサヒは川に肩まで浸ると、柵の中へと入っていった。壁は希少なコンクリート製だ。豊国では、過去の遺跡でよく見られる物質。それを現在使っているということは、都の経済力と資源力の強さを感じた。
「ヒナタ、ボルトが濡れないように預かるわ」
アサヒが柵の隙間から片手を伸ばしてきた。ボルトが濡れて壊れるのか分からないが、念のためボルトはビニールで包んでいる。このビニールも過去の遺産だ。ライト博士が提供してくれたのだ。
ヒナタは躊躇いながらも覚悟を決め、汚水の川の中へと足を踏み入れた。川の底は腐った物質がヘドロのように蓄積し、足を取られそうになる。ヒナタは慎重に足を進め、柵の隙間から手を出してボルトをアサヒに手渡した。
――迷惑かけて悪いな。
ボルトがビニールの中から言った。どこかくぐもって響く声は、少しも悪びる様子がなかった。
――ヒナタ、てめえも覚悟決めろよ。
ボルトはけらけらと笑っていた。どこか腹立たしく感じるのは、ボルトの性格のせいだ。ヒナタはイライラしながら、汚水に肩まで使って柵をくぐりぬけた。もちろん、リークの顔が汚水に浸らないように細心の注意を払いながら。
壁の奥は、暗い洞窟になっていた。洞窟は自然に出来るものだから、この場を洞窟と表現するのは間違っているのかもしれない。コンクリートの人工物の洞窟だ。腰まで汚水に浸りながら、ヒナタたちは先を目指した。壁にあいた穴から、汚水が次々と流れ出している。ヒナタたちは暗闇に慣れている。汚水の洞窟の中は暗闇だが、懐中電灯のわずかな明かりを頼りに、迷うことなく先へ進んだ。
「ここよ」
アサヒは壁に打ち付けられた梯子を指差し、錆びた梯子に手をかけた。
「ヒナタ、上れる?地上に出るよ」
アサヒは梯子を軽快に上り、金属の蓋を押し開け、ヒナタはアサヒの後を追った。




