ライト博士(5)
ヒナタはそんなライト博士の横顔を見ながら、彼が七年前のアキラたちの旅関わっているのだと思うと、不思議な気分がした。アキラたちはどのような旅をしたのだろうか。道の知らない場所で、どのような旅をしたのだろうか。ヒナタは父のことを何もしらない。
――へらへらしやがって。しまりのねえ男が。
ボルトは容赦なくライト博士に文句を言い、ヒナタはそれを聞いていた。
ライト博士の家に戻ると、カシとエイジが座って待っていた。当然ながらライト博士の家は明るい。今まで暗い外にいて、ライト博士の家に来ても慌しかったために気づかなかったが、今ならはっきりと分かる。エイジの顔色はとても悪い。ライト博士が、エイジでなくヒナタに手伝いを依頼したのは当然の判断だ。青白い顔で、目だけを充血させながらもエイジは外を警戒していた。責任感の強いエイジらしい。
「ただいま、エイジ君。黒軍は片付けたから大丈夫」
ライト博士はそう言うと、何も言わずにエイジの傷ついていない腕を掴んで立たせ、部屋の隅にあるベッドに突き倒すように寝かせた。
「ちょっと!」
その扱いが乱暴で、ヒナタは戸惑った。
――おいおい、エイジは物じゃねえんだぞ!
ボルトも大きな声を出した。
「このぐらいしないと、エイジ君は大人しくしないでしょ。俺は君達と違ってインドア派だけれど、今のエイジ君なら容易く組み伏せられる。――この意味、分かるよね?」
言うとライト博士はエイジの腕に巻かれた汚い包帯を解き始めた。エイジの血が赤黒く固まり、ヒナタ思わずカシの目に入らないよう、カシを抱きしめて傷口から目をそらした。エイジの表情が苦痛にゆがんでいる。傷は化膿し、変色していた。
「何日前の傷だい?いつ、どんな風にしてこんな傷を作った?」
ライト博士は戸棚から様々な瓶を取り出した。
「二週間ほど前、黒軍の銃弾にやられた」
エイジが答え、ライト博士は小さく舌打ちをした。
「よりによって、黒軍の銃弾なんて。腕を失うくらいじゃすまないよ。まったく……。痛かっただろうに」
ライト博士は文句を言いながらも、そっとエイジの頭を撫でた。ヒナタはライト博士のことをあまり知らないが、その一挙一動でライト博士が優しい人なのだと分かった。ライト博士は消毒くさい液体をエイジの腕に遠慮なくかけた。医薬品は希少だ。だから、些細な傷や病で命を失う者は多い。ライト博士がどうして、医薬品を多量に持っているのか、それを惜しげなく他人に提供できるのか、ヒナタは不思議だった。
「エイジ君、ちょっと痛いよ。我慢してね」
ライト博士は言うと、傷口の近くに何本か注射をした。それからは、ライト博士が何をしているのかヒナタには分からなかった。




