黒軍の再襲(5)
突然現れた獣。その異様な雰囲気に黒軍も怯んでいた。獣は一つ跳びはね、バイクに乗った黒軍の一人を銜えて投げ飛ばした。獣は確かに知性を有していた。獣はバイクのバッテリーを噛み切り外すと、ヒナタたちのところへと投げ飛ばした。獣はヒナタたちが電力を欲している事を知り、黒軍のバイクにバッテリーがあることを知り、何がバッテリーなのかを知っている。人間であっても、知らない者もいる。
「ヒナタ、コードを出せ!」
エイジが慌てて叫び、ヒナタは配線を取り出した。投げられたバッテリーを自分のバイクの荷台にくくりつけ、コードをモーターに繋げた。要した時間は十数秒。その十数秒は、怯んだ黒軍たちに思考を取り戻させるのに十分な時間だった。
「撃て!」
怒号と共に、黒軍たちは一斉に引き金を引いた。ヒナタはカシを抱きしめて身を固め、そのヒナタをエイジが抱きしめて覆いかぶさっていた。殺されると思う間もなく、思考でなく本能が危険を感知しているのだ。銃声が轟いているのに、一つの衝撃も無く、ヒナタはエイジの腕の中で身を固めていた。衝撃が無い事にエイジも勘付いたのか、彼は顔を上げ、その隙間からヒナタも顔を上げた。ヒナタが見たのは背を向けて立つ獣の姿と、宙で止まる銃弾だった。
(逃げなさい)
脳に響く女の声は、ヒナタたちの行動を支配する力を持つ。ヒナタとエイジは同時に立ち上がり、ヒナタはバイクに跨った。ヒナタの前にカシを乗せ、エイジは荷台にしがみついていた。バイクのギアを入れ替え、ヒナタはアクセルを回した。砂埃を巻き上げ、タイヤが回転し、轟くような音を立ててバイクは進んだ。エイジが振り落とされない事を祈りながら、ヒナタは黒軍の横を突き抜けた。ヒナタたちを追いかけようと黒軍もバイクの向きを変えるが、獣の不思議な力がバイクも銃弾も止めていた。ヒナタはボルトを叩き起こすと、ライト博士の元を目指して全力で前に進んだ。獣の不思議な力のことも、獣が敵か味方かも、考えている余裕は無い。ただ、前へ、前へ、生きるために。光のために。ヒナタに出来るのは、それだけだった。
バイクの力があれば、残りの距離は瞬く間だった。黒軍が見えなくなった辺りで一度バイクを止めて、黒軍のバッテリーをしっかりと繋ぎなおした。ボルトを充電し、ライト博士のところを目指し続けた。そこでリークとアサヒの二人と合流し、タギから光を取り戻す。暗闇の世界に終止符を打つ。




