黒軍の再襲(4)
ヒナタはバイクを後から押してエイジと一緒に歩いた。カシも必死に歩いていた。悪路に行く手を阻まれ、歩いても、歩いても先へ進んでいるような気がしなかった。三時間後、カシの足取りが遅くなった。歩みを止めて見れば、カシの足には血が滲んでいた。
「オイラ、歩けるよ。歩けるよ」
カシが泣きべそをかきながら言った。足手まといになりたくないという、カシの気持ちが溢れていた。
「残りの力は取っとけ」
エイジが言い、カシを抱き上げバイクに乗せた。
「ヒナタは大丈夫か?」
エイジはヒナタにも気遣いをくれた。それが優しく、嬉しかった。
「大丈夫。先に進もう」
食料も水も無い。先を照らす明かりもどの位持つか分からない。ヒナタは歩まなくてはならず、距離を知る事が恐ろしかった。だからボルトに何も尋ねなかった。
よたよたと歩くヒナタたち。先を照らすのは、頼りない明かりだけ。明かりの先は何も見えない。暗闇に足を取られて、何度かバイクがひっくり返った。さすがのエイジにも疲れの色が濃くなってきた。歩き始めて、どの位の時間がたったのか分からない。極寒の豊国では流れることの無い汗がヒナタの額に流れていた。汗が流れるたび、身体は乾き乾燥した唇が切れて血が滲んだ。先が見えない。何も見えない。ここは暗闇の中。
見えない先で土煙が舞ったことに気づいたころには、もう遅かった。暗闇の中、明かりもつけずに歩く黒軍に、いつの間にかヒナタたちは囲まれていたのだ。バッテリー節約のため、ボルトの周囲探索を切っていたため仕方ない。一方で、周囲探索をしたところでバイクが無ければ逃げ切れないのは明らかだが。
「旅人を捕らえろとの命令だ」
黒軍たちのバイクが同時に明かりを灯し、ヒナタたちは突如眩い明かりに囲まれた。ヒナタは反射的に長銃を構え、エイジも刀を取り出した。
「お前達には悪いが、一緒に来てもらう。このような場所で、電力の尽きたバイクを押す者たち。怪しすぎるだろ」
黒軍の一人が言った。
「銃を下ろせ。無駄な抵抗はするな」
盗賊たちが言っていた。黒軍たちもタギに命令されて逆らえないだけなのだと。決して、彼らの意志で行動しているのでないと。ヒナタたちが抵抗しても勝ち目は無い。しかし、このまま従うことは出来ない。張り詰めた空気が闇の中に漂った。直後、緊張を輪って入るように獣がヒナタたちの前に立った。それは、獣。先に出会った知能のあるような獣。獣は何も言わずにヒナタたちを見つめた。




