黒軍の再襲(2)
初めから結論は決まっていた。ヒナタの目に不安そうに立ち尽くすカシの姿が映った。もし、ここにアサヒが居たらどうするだろうか。ヒナタはアサヒの変わりになれない。しかし、今はヒナタしかいない。アサヒはヒナタを信頼してくれた。ヒナタはそれに応えなくてはならない。
「大丈夫。大丈夫だよ、カシ」
強さが欲しいとヒナタは願った。誰にも負けない強さ。いかなる状況にも動じない強さ。全てを守る強さ。願って、願って、願って……。ヒナタはカシの頭を撫でた。
「ほら、行くぞ」
エイジがヒナタとカシに言った。
「出発だい!」
カシがバイクに飛び乗り、ヒナタも頷いた。
「ボルト、ナビゲーションシステムのみ起動。バッテリー消費最小に抑えて。余計な受け答えもいらない」
――あいよ。節電モードに移行。北へまっすぐ進め。方向がずれたら伝える。
しばらくボルトの皮肉も聞けないと思うと、どこか寂しい気がした。
北へ進む道中、ヒナタは途中でエイジと運転を代わった。エイジは三角巾を外し、動きを確かめるように指を動かし肘を動かした。僅かにエイジの表情が歪むのをヒナタは見逃さなかったが、何も言わなかった。立ち止まることは危険に繋がる。休憩は最小限に。ヒナタはエイジの体と自分の体の間にカシを挟み、縄で体をバイクとエイジに固定して僅かな仮眠を取った。そうやって、交代しながらヒナタたちは先へ進み続けた。バイクのモーター音が響き、バイクが徐々に熱を持ち始めた。水も、食料も少ない。一刻も早くつかなくてはならない。
悪路がヒナタたちの行く手を阻んだ。突如生じた崖、道を遮る岩。その都度、ヒナタたちは足を止めなくてはならない。思うように進めない苛立ち、尽きていく物資、時折出現する黒軍。幸いなのは、闇の世界の生き物が襲ってくることが無いことだ。それでも念のため、止まっている時も警戒を隠せない。疲れがヒナタたちを襲い、口数も自然と減っていった。バッテリーの消費を気にしながら、先を急ぐしかない。




