闇と盗賊(10)
荷物を積み終えたヒナタたちを、盗賊たちは並んで見て、キョウがヒナタとエイジに歩み寄り、深く頭を下げた。
「一緒に行きたいという気持ちはある。でも、俺は行けない。すまない」
すると、カオルが言った。
「行ったら?昔からの夢だったじゃない。両親を殺したタギと戦うって」
カオルの声は大きかった。少しはなれたところで腕を組んで立っていたが、言葉でキョウの背中を押していた。昨日の話を聞く限り、キョウとカオルがタギに対し強い感情を抱いていることは明らかだ。タギに対抗しようとしているヒナタたちと一緒に行きたいと思うことは当然だろう。キョウは頭を上げなかった。
「俺は一緒に行けない」
キョウの意見は変わらず、しばらくすると頭を上げ、カオルの方を振り返った。
「俺は、自分と同じ境遇の子供を作りたくないんだ。俺には、俺の戦いがある」
そしてキョウは向きを変え、ヒナタとエイジに言った。
「エイジ、ヒナタ。俺は卑怯者だ。未来を変えるには行動しなくちゃいけない。他人任せじゃいけない。でも、俺はもうすぐ父になる。俺は生まれる前の子供を残して行くことはできないんだ。確実じゃない道に、俺の命を賭けることは出来ない。都に行っても、何にもならないかもしれない。何にもならない過程であっても、俺が死んだら、俺の子供は誰かを憎む。そんなことにしたくない。その代わり約束をする。もし、タギと全面戦争をするのなら、俺の命を子供のために賭けよう。その戦いに勝つとしても、負けるとしても、子供の未来に繋がるのなら、俺は戦う。俺は、子供に未来と希望を残して死ぬことが出来るから。エイジ、ヒナタ。それが、俺の覚悟だ。盗賊の頭として、父としての覚悟だ」
キョウは深く頭を下げた。
キョウは父であった。ヒナタはどこか、アキラを思い出した。七年前、アキラもヒナタの未来のために都に行ったはずなのだ。
「キョウ、カオル。ありがとう」
ヒナタは二人に言った。もし、盗賊たちと遭遇せず、黒軍とだけ鉢合わせていたのなら、と考えるだけで恐ろしい。あの時、盗賊たちが黒軍と戦ってくれたから、今がある。彼らにも多大な犠牲が生じたのに、彼らはヒナタたちを受け入れてくれたのだ。
「帰りに、また立ち寄る。その時は、闇は消えているかもしれないな」
エイジが二人に手を振った。
「オイラもまた来るよ。キョウ、また一緒に遊んでおくれよ」
カシが駆け足で車に乗り込んだ。ヒナタとエイジは盗賊たちに深く頭を下げて、車に乗り込み、ヒナタはエイジの代わりにハンドルを握った。
――ナビゲーションシステム起動。目的地、ライト博士。
ボルトが声を上げた。エイジの膝の上にカシが乗り、車はゆっくりと走り始めた。タギの支配に抗った盗賊たちを残し、車は都へ進む。都から離れた豊国よりも温かく過ごしやすいのに、なぜかヒナタは都に行くことが恐ろしかった。都の闇が深いように思えたのだ。都に近づくことは、闇の中へ足を踏み入れていくような感覚があったのだ。




