闇と盗賊(5)
おとなしそうなカオルに、キョウは頭が上がらないらしく、二人の遠慮のない関係が少し微笑ましく思えた。
「痛てえな。叩くなよ。行きたいとか言っていないだろ」
キョウは背中をさすりながらカオルに反論していた。
「言っているようなものでしょ」
カオルはしばらく黙って、その場を去った。明らかに不機嫌を持ち、同時に迷いを抱いているようだった。
――女は怖えなあ。
ボルトの場の空気を無視した発言に嬉しそうに笑ったのはキョウだった。
「カオルは強いよ。彼女がいなかったら、盗賊はとっくに破綻していたさ。なんせ、俺は好き勝手。仲間を振り回したり、勝手に仲間にしたり……。カオルが俺と一緒に戦ってくれるから、俺たちは一つでいられるんだ。正直なところ、一緒には行きたいさ。でも、一緒には行けない。都に行って、生きて戻る保障がないだろ。だから一緒には行けない。俺は生きなくちゃいけないからな」
キョウが深く頭を下げた。
「俺には何も出来ない。だから、俺は全てを二人に託す」
年下のヒナタたちに対して深く頭を下げたキョウが偉大に感じた。他人に頭を下げることが出来る人は、誰よりも強い。そのキョウだから、盗賊たちは団結することが出来ているのだ。統率でなく団結。ヒナタはそれを感じた。
ヒナタたちはキョウの善意で盗賊の村で一泊の宿を得た。死んだ盗賊が使っていた家。を借りた。アサヒがいないことが寂しいのか、カシは極端に言葉が減っていた。
「カシ、大丈夫。アサヒは大丈夫だから」
ヒナタは根拠の無い言葉で必死にカシを元気付けた。エイジは傷が痛むのか、早々に横になっていた。責任感の強いエイジを思えば、珍しい事だ。斜面に穴を掘った小さな家。冷たい土の上に布を敷いただけの簡素な寝床。豊国では凍死する。壁に近づき、身体を丸めて眠るエイジの服は血で汚れ、包帯も血が滲んでいる。見るからに痛々しい。傷ついた盗賊たちも手当てを受けていたが、痛みに呻くものが多かった。十分な薬もない。このような戦いに身を置かれると知っていても、人々はタギの支配でなく盗賊として生きることを選ぶ。タギが恐ろしい。ヒナタは心からそう思った。
「オイラ、強くなるんだい。アサヒを助けるんだい」
カシが自分に言い聞かせるように言っていた。リークがいない。こんな中、都を目指す理由があるのか分からず、都まで無事にたどり着けるのかも分からない。ヒナタも不安に襲われた。その不安を消し去るように、ヒナタはカシを抱きしめて横になった。




