闇と盗賊(4)
悲劇が始まったのは、それからだった。タギは町の人に電力を提供する代わりに代償を求めた。それは、労働力である。一家族に一人、タギに労働力として提供すること。その者が命を落とせば、次の者が労働力を提供すること。労働者としてタギの下へ行ったのは、次男坊が多かった。次は娘だ。行った者は、早い者で数ヶ月、長い者でも数年で命を落とした。労働者が命を落とせば、家族は次の労働者を提供しなくてはならなくなる。父が行き、母が行き、そして兄弟が行く。最後の一人となった者、家族の残りが少なくなった者は町から逃げ出した。キョウとカオルもその町で生まれ、その町から逃げ出した者だ。今では、町で生きる者はいなくなり、唯の廃墟と化した建物が残されている。
「人々は家族のためにタギの下で働いているんだ。望んでいる者はいない。タギに反している者を隠せば罰が下るが、ばれなければ口を開いたりしない」
キョウは苦笑いをしていた。
「私の父は、家族を連れて町を逃げたわ。幼馴染のキョウのたちと一緒にね。暗闇の世界で、生きる場所を失った私たちは、タギの支配を終わらせることを望みながら、この場所で盗賊として生き延びた。確実だった原子力発電が突然崩れ、タギの支配が始まるなんて……。私はタギが原子力発電を破壊したのだと信じているわ。ならば、この暗闇もタギによるものなんじゃない?おかしいじゃない。タギは暗闇の世界となった時から生きている。病死することもなく、永遠に生き続けている。タギの支配は自然の力や、時の流れじゃ終わらない。希望の光。黒軍たちも、金色の光を見てそれを感じたはずよ。無益な戦いを終わらせるため、自発的に武器を捨てた。そういうことでしょ」
カオルの声は強かった。
ヒナタは自分が恵まれていたのだと知った。豊国は、都から離れた場所にある極寒の土地だ。しかし、豊富な源泉に恵まれ、地熱発電で安定した電力を作り続けることが出来る。寒くとも人々は家族一緒に生きることが出来る。タギの支配に怯える必要がない。ヒナタたちは恵まれている。
「都に行くんだろ」
キョウはエイジに言った。キョウの言葉には羨望が含まれていた。
「ああ」
エイジは包帯の巻かれた腕を押えていた。平然としているが、傷が痛むのかもしれない。カオルが何も言わずに、キョウの背中を叩いた。




