闇と盗賊(1)
ヒナタは持っていた布を引き裂いて、エイジの腕を縛り上げた。狩人たるもの、簡単な手当てが出来て当然だ。エイジの腕は黒軍の銃に被弾し、二の腕の辺りが抉り取られるように切れていた。流れる血は暗闇の中でも確認できた。
「ねえ、エイジ……」
ヒナタは盗賊の下へ戻ることを願った。盗賊も大きな被害を出している。確かに彼らは危険な存在だ。しかし、彼らがいなければ、黒軍に容易く殺されていただろう。
「分かっている。行こう。カシ、もう少し隠れていてくれないか?」
エイジは言って、カシを荷台へ押し込み、運転席に乗った。
盗賊と黒軍の戦いの場に戻ると、そこには黒軍と盗賊の死体が山になっていた。戦いを放棄した黒軍は投降し、その場に留まっていた。傷を負った者に、盗賊は敵味方関係なく手当てを行っていた。先ほどヒナタたちに力を貸してくれた二人の盗賊は、ヒナタたちが戻ってきたことに驚きを隠せないように小さく笑った。
「戻ってこないと思っていたがな」
キョウと呼ばれていた男が頭を掻いていた。そして、彼はヒナタに歩み寄った。
「キョウだ。そして、彼女がカオル」
キョウがエイジを乗せていた女性を指し示した。キョウはエイジの腕を見ると、手招いた。
「刀を使うんだろ。下手したら、二度と刀が握れなくなるぞ」
キョウはカオルと共に手早く仲間の手当てをしていた。
死んだ盗賊は三十六人。怪我をした盗賊は五十三人。死んだ黒軍は十三人。黒軍から盗賊へ寝返った黒軍は六十一人。怪我をした黒軍は二十三人。悲惨な結末であった。
「ついてねえよな。黒軍と鉢合わせるなんてな」
キョウが苦笑していた。ヒナタはキョウのことを嫌いになれなかった。キョウは悪い人でない。それが一目で分かった。仲間を思う言動は、狩人と同じ。どうして彼らは盗賊なのか。そちらの方が興味をそそった。ヒナタたちがいたから、黒軍が襲ってきたことに盗賊も気づいているはずなのに、彼らはヒナタを責めない。
「間が悪いのよ。それで、投降した黒軍はどうするつもり?」
カオルがキョウに言った。
「そうだな、どうしようか……。一緒に来るか?」
キョウは気さくに投降した黒軍たちに言った。
「俺たちに刀を向けるなら、容赦しないけどな」
キョウは立ち尽くす黒軍たちに言った。
「好きにすればいいわ。私たちはいずれ、タギの支配に反してみせる。その覚悟があるのなら、一緒に来なさい。逃げるのも拒まない。私たちは、行き場所を失った者たちが寄せ集まっているだけだから。それで、あなたたちはどうするの?てっきり、バイクで黒軍を追いかけた人を助けに行くと思ったのだけれど……」
カオルがヒナタたちに言った。ヒナタがボルトをトントンと叩くと、ボルトは伝えた。
――アサヒを感知できない。見失った。
それが現実だった。
「不思議な人ね」
カオルがそう言った。




