暗闇の中の旅(2)
寒さでなく、ボルトの声でヒナタは目を覚ました。これほどゆっくりと眠りに落ちたのは久しぶりのように思えた。
――おい、起きろ。時間だぞ。
ボルトが軽快に声をあげ、カシはまだ眠たいと駄々をこねた。寒さが身に凍み、筋肉と関節が強張っていた。昨夜と同様、湯を温め、些細や野菜と穀物で汁物を作りヒナタたちは食べた。駄々をこねならがもカシはしっかりとアサヒの手伝いを行い、ヒナタはバイクや車のバッテリーや機械の調子を確かめた。相変わらずリークは眠り続けている。昨日、ヒナタに語りかけたときも、リークは調子が悪かったのかもしれない。サンズグモと対峙したときも、カシの銃弾を止めた時も、エイジとアサヒの間に割って入った時も、リークは無理をしていたのかもしれない。そう思うからこそ、ヒナタは先を急ぎたいエイジと同感だった。リークの金色の光が弱まることが恐ろしかった。
目覚めて再び先へ進む。荷台へバイクを載せ、一緒にカシとアサヒが乗り込んだ。リークはやはり眠っているが、昼ごろには、肥国の中枢にたどり着いた。高い柵で囲まれた前に、エイジは車を止めて降りた。
「ねえ、大丈夫なの?」
ヒナタはエイジに尋ねた。ここは一国の王が住む場所。容易く近づけず、不審者として殺されてしまう可能性もある。豊国で生まれ育ったヒナタでも、豊国の王に接見したことはない。暗闇の世界であっても、王とは尊い存在なのだ。
「大丈夫だって、安心してろ」
エイジは軽くヒナタの額を小突くと、門の前に立ち、懐から何かを取り出した。すると、簡単に門が開いたのだ。エイジは軽い足取りで車に戻ると、柵の中へ車を走らせた。
「ねえ、一体何を見せたの?」
ヒナタは運転するエイジに尋ねた。
「身分証だよ。豊国の者であり、不審者で無いという証。俺は以前、ここに来たことがあるしな」
エイジは肥国の中枢の建物の前に車を止めた。駆け寄る人々にエイジは深く頭を下げ、ヒナタは後ろからエイジの様子を見守った。その中の一人の男に、エイジはさらに深く頭を下げた。
「突然すみません。援助をしていただきたく……」
エイジの申し出に、男は優しくエイジの肩を叩いた。
「当たり前だ。良く来たな、エイジ」
男は慈しむようにエイジを抱きしめた。




