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dark.dark  作者: 相原ミヤ
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リークの言葉(2)

 エイジが去って、リークが来たのは当然の流れかもしれない。リークは毛布を引きずりながら、ひらり、ひらり、と歩いてきた。

「エイジ、落ち込んでいたよ」

リークはそう言い、ヒナタの隣に腰掛けた。リークの横顔は作り物のようで、色白のリークの顔を電気の明かりが照らしていた。

「それで。リークも私を都へ行くように説得しに来たわけ?」

当然ながら、リークの吐く息も白い。薄い金色の髪が光を反射し、金色の目に自分の姿が映っているようだった。

「説得?そんなことしないよ。俺は、外の空気を吸いに来ただけ」

リークはそこに存在するだけで光を周囲に与える。近くにいると安心できた。大きい力に守られているような気がして、心が安らぎ、気持ちが静まった。

「なんとなく分かるよ」

リークの声は温かく、優しい。光を放ち、未来を照らす。この世界に光を取り戻す鍵があるとすれば、それはリーク以外に何もないだろう。

「リークって変わっているよね」

ヒナタは思わず言った。リークと一緒にいると、アキラに包まれていた頃を思い出した。自分を守ってくれる温かく信頼できる存在。アキラと一緒なら、ヒナタは何の不安も恐怖も覚えることは無かった。孤独になることも無かった。

「そうかな、でも多少人とは違うかもね。いろんな仲間を得たけれど、みんなそう言うからね。でも、一人として同じ人はいないんじゃないかな。俺は自分と似た人なんていたら嫌だよ。だって、俺は自分みたいな人と一緒にいたら、面倒でたまらないからね」

リークの言葉は優しく、冗談を平気で口にする。リークは皆から愛される存在。

「みんな、それぞれ荷物を背負っているんだよ。ヒナタはヒナタの荷物を、エイジはエイジの荷物を、アサヒはアサヒの荷物をね。それは誰の荷物とも比較することは出来ないよ」

言って、リークはヒナタの頭を撫でた。

「良く頑張ったね」

リークの一言が、ヒナタの世界を照らした。思わず涙が溢れた。七年前から、泣くことなんて止めていたのに、自分の中に高い壁を作っていたのに、リークは容易く壁を乗り越えてしまう。それでも土足で入らず、手を伸ばして外の世界へ引き出してくれるのだ。

「アサヒだけが辛いんじゃない。ヒナタも辛かったよね。良く頑張った。一人で生きていこうと頑張ったんだから。良く頑張ったね」

リークの声が硬く閉ざしたヒナタの窓を開く。リークの手を取るのは簡単だった。

「泣いて良いよ。ここには俺しかいないから」

リークが毛布を貸して一緒に包まってくれた。弱ければ、この暗闇の世界で生きていけない。けれども、本当に強い人なんているはずがない。

「ヒナタは優しいんだね。サンズグモの危険性を知りながら、俺たちを助けようと危険に飛び込んでくれた。アサヒを捜し出すために力を貸してくれた。ありがとう」

誰かから感謝をされる。誰かから必要とされる。それが自分の存在理由を作ってくれた。

「リークを嫌う人なんていないんだろうね。私とは全然違う」

まるで子供のように泣きながら、ヒナタはリークにしがみついた。リークは華奢なのに、とても大きく、温かく感じた。

「そうかな。俺は敵が多いよ。俺の判断で多くの人が傷つき命を落としたから。何度も自分を責めたし、その分他の人に助けられてきた。それだけ、長く生きているんだよ」

リークのことを詮索するのは無駄なこと。リークはヒナタたちと違う世界で生きている。力も、知識も、全てが異なる。

「私は、どうすれば良いのかな?」

泣きながら、ヒナタはリークに尋ねた。リークはそっとヒナタの頬の涙をぬぐって答えた。

「好きにすればいい。でも一つだけ。俺はヒナタの力が必要だ。力を貸してくれないか?」

リークの言葉がヒナタの背を押した。

「ありがとう、リーク」

リークが一緒にいれば、ヒナタは安心できた。

「泣いていいよ。思い切り、泣いていい」

泣きながら、ヒナタは覚悟を決めた。泣いて、ヒナタは強くなった。

「なんて謝ったら良いのかな。私は、酷いことをしたから」

ヒナタがリークに尋ねると、リークは微笑んだ。

「大丈夫。人は簡単に変わらない。中身は何も変わらないんだよ」

リークの温もりがそこにあった。

 充電が終わった頃、リークは昏々と眠っていた。敵がいないという証拠なのか、リークはヒナタに寄りかかって眠っていた。

「リーク、リーク」

ヒナタはリークを呼び身体を揺すった。本当に、リークは優れているのか、鈍感なのか分からない。こんな人物が光を取り戻す鍵を握っていることが信じられないくらいだ。

――ヒナタ、行くのか?

ボルトがヒナタに尋ねた。

「行くって?」

ヒナタが問い返すとボルトは困惑したように言った。

――都だ。タギの下へ。

ヒナタは大きく息を吸った。

「もちろん。アキラは生きているかもしれないから」

ヒナタはボルトを叩いた。

――暴力反対!暴力反対!

ボルトは高らかに言った。その声はどこか喜びを含めて、暗闇の中に響いていた。


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