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dark.dark  作者: 相原ミヤ
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アサヒとの再会(3)

 トントン。

「こんにちは」

リークは扉を叩き、扉を開いた。警戒していないリークの行動は、無謀なようで、計算されているようであった。

「怪しい者じゃないよ。怖がらないで」

リークの声と言葉は優しい。誰もリークを憎まず、嫌わない。

「お前、何者だい!」

リークの身体の間をすり抜けて、身の丈ほどの長銃を抱えた子供が外へと飛び出してきた。

「俺はリークだよ」

リークは子供に手を差し出した。

「出て行けよ。オイラは家を守っているんだい!」

子供はリークに銃を向けた。

「困ったな……。それじゃ俺を殺すことは出来ないよ」

リークは困惑したまま長銃に手を伸ばした。子供は怯え、銃を構えた。

「リーク!」

ヒナタは思わず叫んだ。リークは暗闇の世界を終わらせる力を持ち、光を操り、人を超えた存在。決して傷ついてはいけない。必ず、都まで送り届けなければならない人物。

 子供は至近距離でリークに向けて発砲した。避ける奇跡は不可能なこと。長銃の銃弾はリークの心臓めがけて一直線へ進み、リークの命を奪おうとしていた。

「大丈夫。リークなら大丈夫」

エイジは己に言い聞かせるように呟いていた。エイジの言うように、リークの金色の光が零れ、彼を包みリークは平然としていた。リークの身体を包んだ光は、辺りを照らし、暗闇の世界に温もりと希望を広げながら、リークは立っていた。そんな、リークが苛立っているということは、離れた位置にいるヒナタでも分かった。苛立っているのに、平然を装っている。それが、リークの強さであり、恐ろしさであった。

「――人の命を奪う重みを、君は知っているのかい?その業を生涯背負っていくんだよ。そして、他人の命を奪おうとすることは、報復として自分が殺されても構わないということだ。銃を下ろして。分かるだろ……カシ」

子供は大声を上げて泣きはじめた。泣いて、泣いて、銃を取り落とした。

「カシ、大丈夫だから。大丈夫だからね」

リークは子供を抱きしめていた。リークが纏う金色の光が子供も一緒に包み、それは幻想的で美しい光景だった。リークは泣きじゃくる子供の背中を包み、頭を撫でていた。両膝をつき、子供に目線を合わせ、リークは親のようであった。

「ほら、大丈夫」

リークの金色の光が消え、ヒナタとエイジは車から降りた。エイジはリークと子供に駆け寄り、ヒナタはその後を追った。

「お前、本当にカシなのか?」

エイジはリークにしがみつき泣きじゃくる子供に言った。

「大きくなったな。覚えていないだろうけどな。あの時はまだ二歳くらいだったもんな。アサヒが守り育ててきたんだな」

エイジは子供の頭を撫でていた。

「止めろやい。オイラは知らない。オイラは、アサヒを待っているんだい」

カシと呼ばれた子供は勢い良く首を横に振った。

「俺たちは、そのアサヒを尋ねてきたんだ。悪いことはしない。アサヒとは旧友なんだ」

エイジはカシに言い、リークはゆっくりとカシを離した。

「俺はエイジ。そっちはリーク。そして、彼女はヒナタだ。何も怪しくない。安心しろ」エイジは人の良さそうな笑顔を浮かべた。エイジの立ち振る舞いは、とても落ち着いており、それはリークと同じ、他者を安心させる仕草だ。

 ヒナタはカシのことを知らない。七年前、アサヒは一人で戻ってきて、一人で追放された。その時に子供を連れていた記憶はない。そもそも、片手を失ったアサヒが一人で生き延びるだけでも困難なこと。子供を連れていることなどありえない。

 ヒナタたちはアサヒの家に招き入れられた。そこは、小さいながらもしっかりといた家であった。配管で張り巡らされた温泉が熱を生み出し、地熱発電所もしっかりとした設備を持っていた。地下では、電気を利用して些細や野菜の水耕栽培が行われていた。穀物も育てられ、鶏が何羽か別棟に放され、そこは、十分すぎる生活が営まれていた。生き物の侵入を防ぐ柵が無いのは狩人の村と同じ。狩人の村では柵の代わりに村の周りの地面に電気線を張り、生き物が侵入してくると音で知らせるようになっている。狩人の一族は闇の世界の生き物と戦う術を持っているから、獲物の侵入を阻むのでなく、侵入させて狩る。それが、狩人の生き方。カシも侵入して来たヒナタたちに長銃を構えた。それは、小さな子供が狩人として生きようとしている証拠。ここは、狩人アサヒが作り出した家であることを証明していた。

「たった一人で、ここまで作り上げたんだな」

エイジは二つしかない小さな石の椅子に座り、感心していた。リークは再びうつら、うつらと眠り始め、家の隅で毛布に包まっていた。

「違うよ。オイラもいるんだい」

カシは胸を張って言い、エイジはけらけらと笑っていた。

 エイジが言うに、カシは七年前にアサヒが連れていた子供らしい。都へ旅立ち、戻ってきたアサヒはカシを連れていた。カシは当時二歳。片手を失い、満身創痍のアサヒが都から連れて戻ってきた男の子がカシだ。アサヒは豊国の重役にカシを託し、一度は狩人の村に戻ったが、数日してすぐに戻ってきた。戻ったアサヒは都へ行った手当てとして、いくつかの資材や道具を求め、それを手渡されると再び闇の中へと消え行った。誰もが、アサヒは狩人の村に戻ったと思っていたのは当然のこと。この闇の中で一人で生きていくなど酔狂なことをする者がいるはずがない。アサヒは当然のようにカシを残していこうとしたが、カシは泣きじゃくり、アサヒから離れようとせず、アサヒはカシを連れて闇の中へと消えて行ったらしい。


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