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dark.dark  作者: 相原ミヤ
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アサヒとの再会(1)

 ボルトの充電が終了し、ボルトが動き始めたのは三時間後のこと。リークは依然として昏々と眠っている。エイジに尋ねると、リークは殆ど眠っているのだと教えてくれた。その眠りは深く、まるで消える命を節約しているようだった。そんな眠りの中でも、先ほどのような危機を感じると目覚める。リークとは想像を超える人物で、本当に人なのかどうかも分からない。

――ヒナタ!

ボルトの目覚めの第一声はその言葉だった。サンズグモに対峙して、バッテリー切れで動きを止める間際にボルトはヒナタの身を案じたのだ。

「生きているよ」

ヒナタが言うと、ボルトは照れたように答えた。

――無茶苦茶な行動しやがって。ヒナタが死んだら、俺はアキラに合わせる顔がないだろ。

ボルトがそんな言葉を口にすることがヒナタは意外だった。ボルトは常に憎まれ口を叩いているから、ボルトが気持ちを表現する事が珍しく、そして嬉しかった。

「もともと顔は無いじゃない」

ヒナタが言うとボルトはぶっきらぼうに答えた。

――うるせえ。

それはいつものボルト。ヒナタにとってボルトは機械でなく、相棒であり、仲間であり、家族。ヒナタはボルトに状況を説明した。アキラやアサヒと一緒に都へ行ったはずのボルトは何も覚えていないと答えた。ボルトの記憶はリセットされているのだ。

――アサヒがそんなことを隠していたなんてな。

ボルトは一つ、そう言った。

――それで、ヒナタはそれで良いのか?アサヒと顔を合わせて良いのか?

ボルトがヒナタを気遣った。その気遣いは優しく温かい。

「大丈夫だから、アサヒを探して」

ヒナタが言うと、ボルトは詮索を開始した。

――詮索開始。認識システム始動。目標アサヒ。

エイジはこの辺りにアサヒが住んでいるはずだと、言っていた。リークの勘でここまで来たのだと。近くに居ることが分かっていれば、ボルトの詮索で引っかかるはずだ。万一離れていても、人の住む場所をボルトは感知することが出来る。そこを虱潰しに探せば良いのだ。

――捕捉。見つけた。東へ三十キロ。

ボルトが言った。小さくエイジが拳を握りしめたことをヒナタは見逃さなかった。

 アサヒが生きていたことは、ヒナタにとって複雑な気持ちだった。ヒナタはアサヒを憎んでいた。アサヒはヒナタのことをどう思っているのだろう。考えるだけで辛かった。

(どうして、どうして見捨ててきたの!)

昔の自分の言葉が蘇った。ヒナタはアサヒを責めた。片手を失い、傷ついたアサヒを、自分の気持ちの整理が出来ないがためだけに責めた。あの時のヒナタは、大人のアサヒは決して傷つかないと思っていた。

(ヒナちゃん)

アサヒは残された腕をヒナタに伸ばしたけれど、ヒナタはそれを振り払った。

(アサヒが死ねば良かったんだ!)

まるでナイフのように鋭い言葉を、ヒナタは平気でアサヒにぶつけていた。

(ごめんね、ヒナちゃん)

アサヒは何か話したそうに、ボルトを地に置いた。辛いのはアサヒも同じなのに、ヒナタはアサヒを責め続けた。他の狩人たちから罵倒され、石を投げられ、アサヒは村を追放された。本当はこの豊国を救った英雄なのに、誰もそれを知らず、アサヒだけを責め続けた。

(ヒナちゃん、アキラはきっと生きているよ。アキラは強いから、生きているよ。今の私には、一人でアキラを助けに行く力はないけれど、いつか必ずアキラを助けに行く)

今なら分かる。アサヒはこの国のためにアキラを見捨ててきた。断腸の思いで見捨ててきたのだ。アキラが死んだと言わなかったのは、それが事実だから。今のヒナタは当時のアサヒと同じ年齢。ヒナタには、当時のアサヒのように行動できただろうか。その時のヒナタにとって、アサヒは大人で強い存在だと思っていた。今なら分かる。十七歳。大したことは出来ないと。

 バッテリーの節約のため、ヒナタはエイジの車に乗り込んだ。バイクは荷台に載せ、簡易の屋根が建てられた。バイクと一緒に眠るリークが荷台に乗った。毛布に包まれて、リークは昏々と眠っていた。エイジは軽々と眠るリークを抱きかかえ、荷台に載せたのだ。

「リークだったら怒らないだろうよ」

エイジはそう言った。


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