バッティングセンター
朝、起きてからすぐ俺は散歩をした
朝食より散歩を優先した理由は単純に歩きたかっただけ。
夏の日差しは少しキツイけどそれがまた気持ちよかった。
「どこか寄って行こうかな。」
そう考え俺はある所に足を運んだ。
家からはそう遠く離れてはいない場所にある
俺の趣味&暇つぶしとして最適な“バッティングセンター”
野球自体そう得意ではないけど、ただボールを打つことだけなら好きだ。
あと、このバッティングセンターは面白いことにホームラン賞があり、一日一日賞品が変わる。今日の賞品は大型液晶テレビ。
しかし、手に入れるには10球のうち、5球ホームランを打たねばならない
球速は140キロで変化球ありでばらばらに投げられる。
「ま、この店にゃ悪いけど・・・儲けさせてもらうよ。」
微笑み、自信ありげに俺はバットを手に持つ
そしてお金を入れて、準備OK
「さぁ来い!」
1球目・・・
ヒュッ!
スカッ!
手元で落ちてくるフォーク
さっきの勢いは何なのかと問われんばかりの空振り。
「ま、まだまだ!」
2球目・・・
ヒュッ!
カッ!
ど真ん中ストライク
バットにかすっただけで情けない飛距離を出した。
「くそ!こんなはずはねぇ!!」
残り8球に神経を集中・・・
スカッ!
スカッ!
スカッ!
カキーン!
スカッ!
カキーン!
スカッ!
スカッ!
まともに当たったのもホームランまではいかなかった。
「ちっ!壊れてんじゃねぇか!?このマシン・・・」
「アンタが下手くそなんだよ!!」
背後でイラついた表情をし、何とも聞き捨てならない発言をする女性・・・
俺は目を疑った。
間違いないならば、そこにいる女性はあの時海で溺れていた女の子だった。
「お前、何でここに!?」
「ん?私はここの娘なのよ、誰かと思って見てみれば・・・ハハ!面白いモン見せてもらったよ」
「けっ!嫌な女だな」
「嫌な女で結構!・・・それとアンタさ!フォームがダメダメだね。
もうちょい足広げて、腰下げてみ」
「ほほう、それだけでうまくいくかね・・・
んじゃ、もっ回やってみっか!」
カキーン!
カキーン!
カキーン!
カキーン!
カキーン!
・・・
・・・・・・
早くも5回ホームランを出してしまった俺。
「あー、何でホームランすんのよ〜!!
私これスゴく欲しかったのに・・・」
どうやら賞品が一日ごとに変わるということは、お客さんが賞品を手に入れなければ自分たちが貰うということらしい・・・。
(てーか、そんなに金に余裕があるのかよ・・・)
と問いたい。
「ま、これもお礼みたいなモンだと思いなさい!」
「お礼?」
「そうよ!いちいちくだらない事思い出させないで!
賞品は後でこっちが届けるから、さっさと帰りなさい!!」
何やら怒り出す彼女・・・
本気で悔しいみたいだ。
少し悪い気がしながらも、俺はダッシュで家に向かった。