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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
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レアイベント

はしゃぎ回るサナーを眺めていると、係員の声が

「ナランさんのターンになりました」

と言ってきたので、立ち上がってサイコロを振る。「4」の目が出た。いつものように自動で足が進み出す。町外れを抜け、モンスター軍団が動き回る荒野を駆け抜け、朽ちた古城が建っている枯れた森を抜け、広い田園地帯を抜けると、大きな洞窟の前だった。サナーが薄暗いその中を覗き込みながら

「入れってことだろ?行くぞ」

俺の腕を掴んで勝手に入って行く。


 洞窟の中は暗かったが、俺の鎧と剣が勝手に輝くので周囲は明るい。サナーと進んでいくと突如、コウモリの大群が襲いかかってきた。しかしサナーが右腕を横に払っただけで、全て肉塊になって壁に叩きつけられる。

「そうか!レベル99だからな!」

サナーが喜び勇んでさらに奥へと俺を引っ張っていき、左の分岐に進むと光り輝く宝箱を発見した。


 宝箱を開けようとすると係員の声が

「レベル175のトラップだ!解錠スキルはありません。開けますか?」

なんかやたらトラップが多いなこのゲーム……いやまだ2回か……と思いながら、サナーを見るともう勝手に開けていた。宝箱の中からモクモクと煙が出ている。


 煙が晴れると、バッタ頭の怪人が開いた宝箱の前に腕を組んで立っていた。全身緑のタイツには黒いラインがセンス良く引かれていて、ちょっとかっこいい。怪人は堂々とした声で

「私はイナゴカイザー!奇面カイザーシリーズ3号だ!」

サナーと俺が同時に

「やべーかっこいい!」

「なんかかっこいいな……」

そう言ってしまうと怪人は嬉しそうに胸を張り

「……君たちはここを訪れる冒険者の中でも特に強そうだ。しかもこのレアイベントを引く運すら持っている。ヒーローになるための私の講義を受けていくかね?」

俺とサナーが同時に頷くと、怪人はグッと右手を握ってこちらへと突き出し

「誓いの拳を合わせよう!」

俺とサナーが躊躇無く拳を突き合わせると、いつの間にか周囲が燃え盛る逆さの街になっていた。建物が大地から逆さに生えている感じだ。


 なんかよくわからんが景色もかっこいいな……と炎に照らされた怪人をサナーと見ていると

「アンリミテッドボードの秘密を知りたいかい?」

何かかっこいいので、即座に2人で頷く。いきなり悲しげなピアノの音楽が何処かから流れ始め、怪人は語り始める。その長い内容をまとめるとこうだ。


 ……


 ある星の空の果て(宇宙とか言っていたが俺にはわからなかった)までそびえる塔の途中に、とてつもなく巨大なドラゴンの身体が壊れた塔と塔を繋ぐように埋まっていた。その国一つほどの大きさのドラゴンの体内では多数の生き物が繁殖していて、人間に近い種族達も多数いた。


 ある時、勇者が塔からドラゴンを解放してドラゴンは自由になったが、住んでいた生き物たちは塔の宇宙側?の方に避難したので、星から切離されてしまった塔の上層部と共に宇宙内の亜空間?(これも何か説明をしていたがよくわからなかった)を彷徨うことになった。


 彷徨っていた塔の上層部を、二つ尾の女神が憐れみ、この世界へと無事に降ろし、元々ドラゴンの体内にいた種族達は世界中に移住することとなった。その時、ある種族に女神から渡されたのが古代遺物であるアンリミテッドボードである。


 そして数え切れない程の時が流れ、アンリミテッドボードと同化した種族は今もゲーム内で存在し続けているのだ……。


 ……


 俺とサナーは、怪人の話している内容が壮大すぎてほとんど何言ってるか理解出来なかったが、とにかく語り方と雰囲気がかっこいいので聞き惚れてしまっていた。怪人は語り終えると満足げに

「アンリミテッドボードの使命は”具現化”だ。いずれ分かる」

かっこよく言い切り、そして

「私の必殺技アイスナイカッツオを受けるのだ!君たちなら、私の技を受けることで習得できるだろう!」

俺達は即座に立ち上がり

「はい師匠!」

「師匠!喜んで!」

そう答えていた。


 師匠からいつの間にか、洞窟の開けた場所に連れて来られた俺達はカジノで手に入れた装備を全て外し、技を全身で受けるため、また下着姿になる。天井が崩れて空から夕陽が射し込んだ洞窟には、謎のテンポのよく気持ちが熱くなるような音楽がどこからか流れ始めた。師匠は腰を落とし、両腕を宙をかき混ぜるようにゆっくり回すと、ピタッと止め

「アイスナイカッツオとは、つまり古代種族に伝わる氷の亀の神獣だ。その神獣の力を宿す一撃なのだ。よしっ!先ずは受けてみろ!」

師匠は一瞬で辺りの気配を張り詰めさせると

「ひっさつ!」

そう一度区切り、右手を腰の後ろまで引いて、そして

「アイス!ナイカッツオ!!」

俺目掛け、全力で凍てつく氷に包まれた右ストレートパンチを繰り出してきた。ガードが間に合わず、その凄まじい属性付き打撃で吹っ飛ぶのを覚悟した瞬間、サナーが間に入り、ガードしながら受け切った。


 サナーの身体が青く光り輝き出し

「すげえ……これがアイスナイカッツオの極意……」

師匠は腕を組み頷くと

「短い間だったが、君たちとはここでお別れだ。この世界はただのボードゲームではない。ゴールへとたどり着けることを願う」

そう言うと消え失せた。俺とサナーが呆然としていると、奥からいそいそとブラックゴブリンが出てきて

「この洞窟の主の……」

と言いかけた瞬間、青く発光したサナーの

「アイス!ナイカッツオ!」

という今習得したばかりの必殺技で吹き飛んでいった。係員の声が

「ダンジョンをクリアしたのでナランさんのターン終了です。他のプレイヤーが行動を終えるまでお待ちください」

二人で装備を付け直しているとサナーがポツリと

「師匠、行っちゃったな」

「そうだな。何か大切なことを教わってしまったな」

「……金髪不幸女はこのターンでどんな不幸になるんだろうな……」

「……それ、今、話す必要あるか?」

師匠との別れだけを考えていて欲しい。サナーは嬉しそうに

「私は師匠と出会って!必殺技まで手に入れたのに!金髪女はこのターンどうせまたしょうもない不幸に陥るんだぞ!?最高すぎる!」

「おい、心配になってきただろ……」

今考えると、何としてでもプレイヤーになるのを止めるべきだった。サナーは装備を付け終えると本気で幸せそうに

「あー……ヤツが一歩も成長しないで、しょうもないエロい不幸に陥っているのを想像するだけで癒されるわー。昼寝から目覚めたら手足くっついちゃうかも!」

銚子に乗った暴言まで吐いてきた。

「悪意ありすぎだろ……リースは裏表のない努力家なのは知ってるよな……」

サナーみたいに性格が悪くなく、ひたすらに真っ直ぐなので余計に心配だ。


 しかし、今のところ、良い結果しか出ていないので……このボードゲームを楽しみつつある自分が居るのがヤバい気がする……もはやサナーはハマってしまっているので、俺だけでも冷静でいなければ……リース、大丈夫だろうか……。

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