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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
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時間の無駄

ガラクタに囲まれた一階の室内に入りながら

「チョンマゲってなんだよ……」

小声でミヤに尋ねると、聞こえていたらしいボニアスが

「悪魔たちの世界に古代からある髪の結い方じゃ。古の戦士や、古のスポーツ選手がしていた聖なる髪型じゃな」

「そうっ!私、ちょっと好きで昔調べていた時があったの!押し出し!小手投げ!内無双!もろだし!」

ミヤが嬉しそうに言ってくる。ボニアスは実に嬉しそうにニヤーッと笑って

「またプリティなオナゴ友達をつくってしまったのう!それはそうと、ナランよ」

「なんだよ……サナーは触らせんぞ」

俺が背負っているサナーはさっきから無言だ。ボニアスはニヤニヤしながら

「まあ、座らんか。サナーちゃんの席も用意しよう」

彼はガラクタから椅子と折りたたみ式のテーブルを取り出して並べると俺たち三人を座らせた。そして、テーブルを挟んで向こう側になんと空中に浮きながら座る姿勢で静止した。

「うっ、浮いてる……」

ボニアスは驚いた俺に嫌そうな顔を向けると

「お前のろくでもない古代遺物と比べれば、こんなのなんでもないじゃろうが。イメージの問題じゃよ。疑わねばできるんじゃ」

頭のおかしい状態の奇人が頭のおかしいことを言い出したので

「……ま、まあ、それは置いておくから、なんで、俺を呼んだんだよ」

話を変えようとすると、ボニアスはニヤニヤ笑い

「ナランよ。お前のスキル枠に寄生しているその古代遺物はお前を操って、なんかろくでもないことを企んどるぞい」

「……だろうな。けど、もう引き返せそうにもない」

ボニアスは浮いたまま、両腕を伸ばすと。少し考えた顔をした後

「……ああ、古代遺物の力でガチガチの人間関係を構築して人質に取っとる感じじゃな。やつらがよくやる手口じゃわ。噂によると、王家の姫のマイナススキルを中和して婚約したらしいな?」

「その通りだよ……」

たぶん地元の噂でも聞いたんだろう。

ボニアスは、浮いたまま横に寝転び、また何か真剣に考えると

「……サナーちゃんの顔を見てみ」

と唐突に言ってきた。


 隣のサナーの顔を見るとボーっとしている。

「じいさん、何かしたのか?」

ボニアスは下品な声を立て爆笑し始めると

「通信をカットしとるだけじゃわ。うちのワイファイは特別製でな。古代遺物どものネットを介した通信が届かんのよ」

「……?」

ボニアスはミヤの顔を見て

「まあ、わしから見れば前時代的じゃが、プリティ小悪魔ちゃんの世界にはネットも配信もあるんよな?」

ミヤは苦笑いしながら頷いて

「携帯を持たないでいいから、こっちの世界は気楽だけど」

ボニアスは満足げに頷いて

「嬢ちゃん、なかなかいい線いっとるぞい。同じものと繋がり続ければ、くだらない考えと同化してしまう。異化するためには絶ち切ればいい。あんたが好きな時にな」

ミヤはまた苦笑いすると

「チョンマゲじいちゃんはどんな生活してるの?」

ボニアスはニカッと笑って

「好きな時に好きなことしとる!けどなぁ……」

ボーッとしているサナーに目を細め

「まぁ、孤独じゃよ。だからサナーちゃんみたいな優しい子がわしの人生には必要なんじゃぁ……」

急にボニアスは情けない表情になった。


 ……なんだこいつ、捕まったことがある性犯罪者なのは良く知っていたが、喋っている話の意味が全く分からない。俺の頭が混乱し出すと、彼は苦渋の笑みを浮かべ

「センスのいい小悪魔ちゃん……わしに半ケツとか……腋とか見せてくれんのぉ……」

いきなり真面目な雰囲気の中でふざけ始めた。ミヤは一笑に付して

「もう露出多いのは沢山だね。サキュバス職を最近までやらされてて」

ボニアスは惜しそうに

「そうかぁ……まあ、確かに小悪魔ちゃんは限りなく人間に近づいとるからなぁ……しかしいいのかぁ?」

ミヤが首をかしげると、ボニアスは真剣な顔で

「楽をしすぎて、とてつもない才能が枯れ始めとるぞぉ?おお、良いこと思いついた」

ミヤが困惑した顔をしていると、浮いていたボニアスは着地してドタドタと二階へと上がっていった。


 すぐに駆け戻ってきて、また同じ位置でわざわざ浮き上がると透明なホースのようなものを見せてきた。

「これをサナーちゃんのア〇ルと、小悪魔ちゃんの口に繋ぐんじゃ!」

次の瞬間には、一瞬で距離を詰め飛び上がった俺とミヤが同時に、この性犯罪者の頭と頬をバァンッ!と乾いた音が響くほど叩いていた。。

「いっ、痛たたた……本気じゃよ……冗談ではない」

ミヤは大きくため息を吐き

「あのさぁ、それ咥えてちょっとでも変なのが流れてきたら、私が病気になるよね?物知りなじいちゃんなら、人間のお尻の中にどんだけ強い菌が居るか知ってるでしょ?」

ボニアスは傷ついた表情で

「ち、違うんじゃあああ……わしがサナーちゃんの中に寄生しとる古代遺物をな切除して、人格排出するんじゃよ。その人格排出された古代遺物を小悪魔ちゃんが飲み込むとな。恐らくは、悪魔たちの身体が消化して魔力が覚醒する」

ミヤはいきなり真剣な顔になり

「私が、サナーちゃんの中の古代遺物に支配されないの?」

ボニアスは力強く何度も頷いて

「こやつらはなぁ、人間には寄生するがなぁ。悪魔……あんたらの言うヒトには寄生できんのじゃな。なぜかというと、体の構造の複雑さが違いすぎる。魔力の許容量も違う」

ミヤはなんと

「う、うんー……もっと、綺麗なやり方なら頼んでもいいけど……」

ボニアスは嬉しそうに

「そ、そうか!ならばもっとマシなのを考えてやる!」

浮くのをやめて、またわざわざドタドタ走りながら二階へと駆けて行った。


 俺はミヤの顔を見て

「あのさ、あいつの言うこと聞かない方がいいと思うぞ?」

ミヤは真剣な顔で

「私ってさ、知ってるだろうけど、ずっと落ちこぼれで。もしヒトとしてやりなおせるなら、そのチャンスは掴みたいかなって」

「いや、でも、直接話して分かったけど、あいつはヤバいと思う。もし言ってることが本当でも、ろくなことにならなそうだけど」

それがずっとあやふやな話を聞いていた俺の結論だ。

リブラーも大概だが、まだリブラーなりに筋を通そうとしている気はする。

ボニアスは、何か俺たちが得するような話をしている感じだが実は自分がやりたいことに引きずり込んでいるだけだと思う。

そんなことを考えていると、サナーがいきなりハッとした顔で

「あ、あれ……ボニアスじいさんの家の中だ。いつの間に……」

今までミヤにボニアスが話していたことをサナーに教えるとサナーは笑い出して

「ミヤ!やめとけ!あのじいさんに深入りしちゃだめだ!私も出入りしているときに怪しい話を散々聞いたり変なのも見たけど、自分に役に立つのが確実な時しか、利用しない方がいい」

ミヤは戸惑った表情で

「そ、そうかな……うーん……」

二階からボニアスがドタドタと降りてきて

「こ、これじゃ!!これを小悪魔ちゃんが履いて、サナーちゃんを背後から貫けば!」

鉄でできたショーツの前方に二本の折れ曲がった突起物が付いた……どう考えてもとてつもなく卑猥な形状の履物を見せてきた。

また瞬時に距離を詰めた俺とミヤが同時に頭を両脇からバァンッと叩くと、ボニアスはショックを受けた面持ちで床を見て座り込み

「どうしてじゃああああ……これなら、サナーちゃんと直接接触はせんし……サナーちゃんがちょっと気持ち良くなるだけでじゃろがあああ……」

サナーが呆れた顔で

「じいさん、もう諦めなって。また機会があったら来るからさ」

ボニアスは動かなくなってしまった。

俺は思う。この性犯罪者はとんでもなく凄い能力者かもしれないがその凄まじい能力は、どう考えても大抵の人には役に立たない。要するに物凄いポンコツだ。

俺はサナーを背負って、ミヤに目で"出るぞ"と告げる。ミヤは黙って頷き返した。


 外に出ると、家の中からボニアスが走り出てきて

「ううううう……わし、色々してやれると思うけどなぁ……」

悔しげに言ってきた。俺に背負われたサナーが

「また元気になったら、腋くらいは見せてやるよ!じゃあな!」

俺とミヤも軽く会釈して、呻いているボニアスから遠ざかっていく。山道を下りながら

「時間の無駄だったな」

と俺が言うと、サナーが「うんうん」と返してくる。ミヤは軽く唸りながら

「じいちゃんと、姉貴を会わせたら面白そうだけど」

「……どうだろうなぁ……」

急に頭の中でリブラーの声が


いきなり失礼します。通信が回復したので重要な助言をいたします。ボニアスは高確率で高次元人です。

彼らは、時空間や次元間を行き来して特定の惑星の監視をしていると推測されています。

その大多数の存在の真の目的は不明です。

サナーさんの判断は正しいです。深入りは危険です。


なんか惑星とか高次元とか、聞いたこともない訳の分からない単語を言ってきたので聞かなかったことにした。

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