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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
魔力変動の推移の観察

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ワームホール

爪に火をともして辺りを明るく照らしているアンジェラがヘグムマレーと談笑しながら向こうから近づいてきて、そして俺たちを見つけると

「二人とも離れないで良かったわ。ごめんね、流砂の位置を忘れてて」

「いや、いいんですけど、タヌガワラさんとも会えましたし」

アンジェラはタヌガワラに握手を求めてから

「タヌさんは、うちの家の造園などもしてくれている凄腕のヘッドベヒーモスよ。ここの侵攻事業の管理責任者ね」

タヌガワラは少し恥ずかしげに後ろ頭をかきながら

「いやー……ここも請け負ってるだけで俺は別に社長でもねぇし、まあでも、ワンオペだからヒトと話せるのは嬉しいわな」

「ワンオペってなんですか?」

リースが興味津々な面持ちで尋ねると、タヌガワラは真顔で

「一人で現場を回してるってことだーよ。サンちゃんのお父さんお母さんが頑張ってくれてるからなぁ。まあ、そのうち、でっかい流砂が砂漠の真ん中にできるだろうなぁ」

ヘグムマレーが慌てて

「挨拶が遅れたが、この辺りの砂漠地帯の領主であるヘグムマレー・ウィズじゃ。タヌガワラさん、アンジェラさんからお話はさっきまでの道中うかがっておった」

タヌガワラは困惑した顔でアンジェラを見て

「あらー……領主さん連れてきちゃったべか?」

「先にどのように失敗するかまで話し合っていた方がお互いの利益になるかと思ってね」

タヌガワラは腕を組んで

「そうだべなぁ……電話で社長とちょっと話してもいいべか?」

アンジェラが頷くと、タヌガワラは長方形の掌に収まる程度の黒い金属片を取り出し、右耳に当てると後ろを向き

「あーミナモダ社長?現地の人間の領主さんがアンジェラさんの仲介で接触してきたべよ。ウィズって名乗ってるから多分王族だべ。ふんふん……変わってほしいと。あー……電話がわかんねぇかもしれねぇからアンさんに仲介してもらってもいいべか?」

そしてアンジェラに金属片を渡すと、彼女もそれを耳に当て

「大体四年くらいで、坑道の崩落事故で失敗と言うことにしたいから、それまで放っておいてほしいと。地上には手は出すつもりはない。そちらへの報酬は、坑道を作る途上でサンドワームの糞から出てきたダイヤモンドを二割でどうか……ということだそうよ?」

ヘグムマレーは真剣な顔で

「ダイヤモンド何キロくらいになるんかの?」

アンジェラはまた金属片に耳を当てて

「だ、そうよ」

と尋ねてすぐに

「年間採掘量の二割で約千キロね。ゴールドもおまけで百キロ分つけるそうよ。つまり四年で、四千キロのダイヤと四百キロのゴールドということ。もちろん洗浄はそちらの会社でするのよね?……そう。するとのことよ」

ヘグムマレーは頷いて

「わかった。採掘技術もそちらの方が上じゃろうし文句は言わんでおこう。うちの保養地のものに受け取るように言っておく」

さらにアンジェラとヘグムマレーは細かい受け取りの期日などを話し合い始め、タヌガワラはホッとした顔で

「話がついたようだーよ。ところでナラン君、君たちの言う悪魔で、いい娘っ子を知らんかな?」

ミヤの顔しか思い浮かばないが、未成年なので頭を横に振ると彼は何とも言えない顔で

「アンさんに紹介して貰ってもいいんだども、あの人、普通に合コンにヒトに擬態したモンスター連れてくるからなぁ」

話し終えたらしいアンジェラがニコニコしながら近寄ってきて

「きちんと、我が国に二人を連れていけたら、五十歳前後のベヒーモス女子を三人紹介してあげる」

タヌガワラは急に興奮した顔になり

「そ、そんなわけぇ子……俺、振られねぇかな……」

「三人ともうちの庭園整備のバイトさんで婚活中よ。ほら、この間、うちに直しに来た時にひとり見たでしょ?」

「あ、あの……肉付きの良い子だか?おさげの?」

アンジェラが頷くと、タヌガワラはすっかりやる気になって

「よっし、話もついたようだし、さっそく水先案内人を務めるだ!それにサンちゃん、ウィズ家の偉い人を地上まで案内するだーよ」

ズルズルとさっき俺に纏わりついていた黄色く人並みの大きさの芋虫が近づいてきて、ヘグムマレーの近くで身体を上げ、軽く会釈した。

「おお、これはどうも。では、サンちゃんと共に帰ろうかの」

ヘグムマレーはタヌガワラからカンテラを渡されるとサンドワームの子供に連れられて洞窟の中を去っていった。

アンジェラも交えた俺たち三人は、タヌガワラにヘグムマレーと逆方向へと洞窟の中を案内されて行った。


カンテラを持ったタヌガワラに先導され、俺はリースとぴったりくっついて、その横にアンジェラが優雅に歩くという感じで狭い洞窟の中を進んでいると、時折大きな地震で足元が震え、更に軽く土砂が頭上から落ちてきて目の前に積もる、ということが十回ではきかないほどに繰り返される。

不安になった俺はタヌガワラに

「あの、これ崩れないんですか?」

と聞くと、ニカッと白い歯を見せながら彼は振り返ってきて

「素人だーね?俺の坑道作成は地盤を完璧に読んだ上で二匹のサンドワームに掘り方を頼んで任せてるだ。最終的には崩れる予定だけども、それは四年後のことだよ」

アンジェラも微笑みながら

「腕は一流以上よ。信頼していいわ」

俺と腕を絡めたリースも真剣な表情で

「信じないとね?」

「う、うん。なんかすいません」

「いいだーよ。俺は誰かと話せてるだけで嬉しいだかね」

タヌガワラは前を向き直して、また進み始める。


洞窟は曲がりくねりながら下へと延々と続いていて、もうどれくらい歩いたか分からなくなったころに急に開けた場所に出て、その中心部には、黒い瘴気が渦を巻く穴が広がっていた。

アンジェラが微笑みながら

「これが、我が国へと繋がるワームホールよ。あなたたちが魔界と呼んでいる場所への入り口ね」

タヌガワラは大きく息を吐くと

「よし、もうこれでいいだね?」

アンジェラは満足そうに頷いて握手を交わし

「私は約束は守るわ」

「ナラン君とリースちゃんも気を付けるだよ?アンさんがいるとしても、我が国はそんなに簡単ではないだ」

「は、はい……頑張ります」

「ご案内ありがとうございます」

リースが優雅に頭を下げて、俺も慌ててそれに倣う。

タヌガワラはニカッと笑って会釈を返してくると、去っていった。

アンジェラは黙って渦に飛び込んだので、俺が驚いていると意を決した顔になったリースがガシッと絡めた俺の腕をさらに強く結び、そして俺ごと引きずり込むように渦へと飛び込んだ。

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