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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
最適な対象の発見と試行期間

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遺跡探索

笑うのを必死にこらえていたローウェルが、俺とヘグムマレーに軽く説明すると、さっさと四頭立ての馬車で去っていった。

これから近くの基地で物資を積んでの戦地への補給任務があるらしい。

あのおっさん……俺らと遊んでいるかと思えば仕事もこなすとは……さすが忍者……いや元忍者か……。


遺跡探索は、ヘグムマレーのサーチアイズという探索魔法を補助的に使って行うそうだ。

「なんか、王族の方にご迷惑かけて……」

「任せろ!依頼者である私とさらに娘のためじゃからな!リース来なさい!」

「お父様、どうしたの?見てみて、()けずに歩けるの!」

リースは軽やかな足取りでこちらへと走ってきてサナーも迷惑そうな元村長の手を引いて楽し気に走ってくる。

ヘグムマレーは真剣な顔で

「お前とナランさんに、これから何らかの魔法契約を結んでもらう」

リースは理解した顔で

「……つまり婚約から奴隷契約までどれかってこと……?」

ヘグムマレーは口を真一文字に結んで深く頷いた。

リースは少し「ふーん」と考えてから

「ナランさんは私のことどう思ってるの?」

軽い調子で訊いてきた。

サナーがなぜか固唾を飲んで見守っていて、元村長はめんどくさそうな顔で欠伸をしている。俺は用意していた答えを言おうと

「最近知り合った友達」

と答える。

リースは腕を組んで納得した、と言った顔で頷くと

「じゃあ、盟友契約ね。友として私はあなたから離れない」

サナーが慌てた顔で

「ちょ、ちょっと待てよ!私は奴隷契約だからつまりそれだったらリースの方が何か上みたいになるだろ!?」

リースはニヤニヤしながら

「でもーっ。今更、対等な盟友にはなれないんでしょー?」

「うっ……それはそうかも」

リースはサッとサナーの身体を押し退けて

「では、お父様、よろしくお願いします」

恭しくヘグムマレーにお辞儀した。俺も頭を下げることにする。

ヘグムマレーは大きく息を吐いてから、右腕を天へと振り上げ

「この者たち、リース・ウィズとナラン・ベラシールの二人、盟友として絆を結ぶ。天よ!地よ!二人を分かつことなく友として成し遂げさせよ!」

次の瞬間、俺の下げた頭の頬を小さな氷の刃が微かに切りそしてリースの耳たぶも別の刃に瞬時に切られた。

二つの血の付いた氷の刃は、空中でくっつくと「シュボッ」と音を立てて蒸発した。

ヘグムマレーは額の汗をぬぐい

「これやるのは二十年ぶりじゃわ。どうかな氷魔法式だったが」

元村長が鋭い目つきで

「私が村長です」

真剣な口調を添えてウンウンと頷いた。ヘグムマレーは苦笑しながら

「あんたは、そういうの知ってそうな、今の低レベルに見合わぬ魔力保有者じゃからな」

と意味深なことを言ってから、大きく息を吐き安堵した表情をする。

リースは俺の手を取ってきて

「これで、私とあなたは常に一緒にいることになりました!」

サナーがハンカチを噛んで口惜しそうに

「くくくくーっ、なんか悔しい!羨ましい!」

俺の意志は無視して話が勝手に進み続けているがここまできて無暗に抵抗すると絶対ヤバいことになると思うので、もう流れるままにしている。


樹海へと入り、人が切り開いたであろう開けた道を通っていく。

しばらく進んだ後、道が途切れたのでヘグムマレーが皆を集め、右手を天に掲げ、聞き取れないくらいの高速で何かを詠唱すると

「サーチアイズ」

とポツリと呟いた。

同時にヘグムマレーの掲げた右手から黄色い光の線が樹海の奥まで伸びていく。

彼は大きく息を吐くと

「この方向を覚えておいてくれ。この光を維持するのは無理じゃ」

リースが右手をピンっと上げて

「お父様!覚えたわ!」

というと、彼は安堵した顔で右腕を下げ同時に光も消えた。

サナーが興味深そうに

「今のって結構、高位魔法なのか?」

ヘグムマレーは額の汗をハンカチで拭うと、一度深呼吸をして

「ああ、知らない目的物を探すという魔法じゃがある意味、未来予測とも言えるじゃろ?」

サナーは腕を組んで必死に考えながら頷いた。

「なので、ある意味、未来改変を行うようなこの手の探索系魔法はかなり扱うのも難しく、魔力の消費も激しいんじゃ」

「勉強になった。ありがと」

俺は黙って、ヘグムマレーの前にしゃがみ

「背負います」

と言った。王家の人にここまでしてもらって申し訳ない。

ヘグムマレーは苦笑しながら

「すまないが、甘えることにしよう」

と答える。


サナーと元村長がまずは草と枝を剣で刈りながら先頭を進んでいく。

そうして簡易的な道を作ってもらった後を

ヘグムマレーを背負った俺と、同じ方向をずっと見ているリースが一直線にゆっくりと進んでいく。

サナーたちは草刈り枝刈りが段々上手くなっていき、次第に進行スピードが速くなっていった。

その二人がピタッと停止して、慌てて俺たちの方へと戻ってきた。

サナーは小声で

「……この先の広場がモンスター塗れだ……。あの、ヘグムマレーさんやってもらっていい?」

ヘグムマレーは黙って、俺の背中から降りると前方へと進んでいき

「あー……まあ、三十秒くらいじゃな。ちょっと待っていてくれ」

そう言うと「アイスシールド」「霧の舞」「マジックブースト」などと矢継ぎ早に防御呪文などを唱えてそして軽く体を伸ばし、俺が脇からどんなモンスターたちが前方に屯しているのか見る前に、彼は草むらをかき分け走り出した。

次の瞬間には

「コキュートス!!パラレル!!」

多量の雹がまるで渦のように幾重にも目の前の空間に降り注いでいくのが見え、それらは目前の空気までも凍り付かせ、そして割り壊すという超速のサイクルで繰り返すと、何事もなかったかのように綺麗に消えた。

目の前の開けた空間には、モンスターであったと思われる細切れにされた凍った肉片が散らばっていた。

サナーが微かに震えながら

「これが……高レベルウィザード……数十体のリザードマンとゴブリンが一瞬で……なんか自信が……」

リースが励ますようにサナーの背中を叩いて

「お父様は、王国有数の魔術師だから、普通の人とは違うから心配しないで」

「……う、うん……凡人並みにがんばろう……」

ヘグムマレーは汗一つかいていない涼しげな表情で

「攻撃魔法なんてものは、規模が大きいか小さいかの簡単な原理じゃからな。先ほどの探索魔法の方がよほど難しい」

「……御見それしました……」

としか俺は言えない。

レベルが確か77とか言ってたよな。こんなに差があるのか……。

元村長だけは、全然気にしない様子で、草むらをかき分けて広場へと出ていった。俺もそれに続き、辺りを見回す。


前回のようにモンスターが屯している先が遺跡というわけではないらしい。

しばらく辺りを全員で確認しているとリースが開けた場所の向こうに、草や蔦に隠れるように敷かれた石畳が草むらに隠れている道を見つけ

「こっちよ!」

と俺たちに腕を振って教えてくる。

少なくとも、モンスターに殺される危険だけはないので今回はかなりマシだなと思いながら、俺は仲間たちと先へ進む。

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