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冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
特定監視対象スキルの観察とデータ収集

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122/128

スキル異常

 サナーが沈黙するとリースはスッキリした表情で広い湯船に入ってきて

「もう、復讐はしないから」

「……サナーがすまん……俺も止めたんだけど……」

「罪の意識があるなら……今日の寝室で返して」

「はい……そうします」

真剣に反省していると、サナーが起き上がって湯船に静かに浸かって来た。そして

「……お前ら、結婚するんだよな」

「そうよ」

しばらく沈黙した後に

「私も……連れてけよな。警護と日常のお世話係として」

リースは目を細めて

「私の奴隷ってことにもなるけどー?」

サナーは慌てて首を横に振り

「うう……ナランの奴隷だ!リースや他の誰にも私は支配されない!ナランだけの奴隷なんだ!」

リースはニコリと微笑むと

「冗談よ。復讐は果たしたし、お友達に戻りましょう」

サナーをいきなり抱きしめた。サナーは肩の力を抜くと

「リースお前、超良いやつだよ。性格ちょっとでも悪かったら絶対暗殺してる……」

「私もサナーちゃん嫌いだったら、権力使って遠ざけてる。不敬罪で投獄するかもね」

俺はもう気配を消すしかない。この危うい女達の友情は怖いと思います……。


 その後、脱衣場ではサナーは大人しく服を着て、俺達と共にエレベーターに乗って3階の寝室へと向かい、扉を開け入る。リースが

「隣の部屋が空いてるの。ちょっと出ていてくれない?」

そう言っても首を横に振り、部屋の隅に足を折りたたんで座ると、両眼をカッと見開き

「私の覚悟を見るがいい!」

威勢の良いことを言って来た。仕方ないのでサナーは居ないことにして2人でベッドの上で始める。


 全て終えて、2人で何も着ずにそのまま寄り添いながらシーツを被り寝ようとするとリースが

「あれ、サナーちゃんは?」

完全に忘れていた。部屋の隅を慌てて見ると、まだ座ったまま、充血した両目を見開いてこちらを見ていた。リースがベッドから飛び出て俺も続く。

「大丈夫?」

リースが本気で心配しながらしゃがみ込むとサナーは鼻血を垂らしながら

「うう……お前らあ……恥じらいってものはないのかあ」

「鼻血拭いて、いつもみたいに一緒に寝ましょう?」

「くっ……嬉しいと思ってしまう自分が情けない」

サナーはリースから渡された、ちり紙で鼻血を拭くと、素早く全て脱いだ。その後はいつものようにほぼ強制的に俺の左右に女子達が抱きついてきて、寝ることになる。



 ……



 寝たと思ったら朝が来た。極限まで疲れるとそういうこともあるとは知っているが……昨日は確かにヤバかったよな……天井を見上げ考える。当然の様に右に柔らかいリース、左に固めのサナーが抱きついて寝ている。幸せ……なんだろうな。客観的に見ると……こんなこと普通無いよな。うーん……でも、昨日の朝のが幸せだったな。サナー居なかったのに。いや、でもサナーも居るほうが、何となく落ち着く。何処に居てもサナーが居ると実家感があると言うか……。いや、違うか?まあ、いいや。


 また目を閉じて二度寝しようとすると、リースが小さく

「昨日、楽しかったね」

「……毎日、上手くいっててありがたいと思う」

「ずっと、こんな日が続けば良いのに」

「だよなあ。今日は暗黒地帯に行くんだよな?」

「ローウェルさんも行くらしいから、時間は無駄には出来ないでしょ」

いきなりサナーが抱きついた腕の力を強め

「……まだ私、王都で遊んでない」

起きていたらしい。俺はため息を吐いて

「俺たちも遊んでないぞ……ここと王宮を行き来しただけだ」

「……じゃあ、制圧したら遊ぼう」

リースがクスクスと笑いながら

「そんな簡単にはいかないでしょ?五十年どうしようもなかったのよ?」

サナーは突然ガバっと上半身を起こし

「3日くらいで終わらすぞ!」

そう、宣言した。


 食堂で3人で朝食を食べていると、ローウェルがやって来て着席する。深刻な表情で

「……暗黒地帯への遠征なんだが」

「何かあったのか?」

「国王自らの御親征になった。昨晩、決められたそうだ」

しばらく3人で黙り込む。寝ている間に話が大きくなっている。ローウェルは更に

「ヘグムマレーさんが、夜明け前から王宮で調整を始めてる。俺はアンジェラさんを探……」

コツコツと窓が叩かれて、外には笑顔のアンジェラが浮いていた。ローウェルは素早く窓を開け、招き入れると

「御親征でしょう?暗黒地帯でヒトを沢山殺されると困るのよねえ。操られているだけだし」

ローウェルは椅子を引いてアンジェラを座らせると

「ヘグムマレーさんに許可は取った、御親征の前に暗黒地帯を解放するぞ」

アンジェラは頷いて

「スキル適正があるミャーマさんは連れていけないけど?リブラーに聞いてみてくれない?」

俺はすぐに

「リブラー」

と唱えた。


 申し訳ありません。ミャーマさんが国王からこれほど愛されるとは予測不能でした。緊急事態なので、暗黒地帯征伐のため、下位機能であるモノラースを通し、サナーさんのスキルの入れ替えを行います。御本人の同意が必要なので、尋ねては頂けないでしょうか?


 サナーに今の話を伝えると、心底嬉しそうに

「やった!私もナランみたいに超強くしてくれ!いいなリブラー!?」

俺の目を覗き込んでくる。頭の中で声が


 では、サナーさんのスキル入れ替えを行います。……サナーさんにスキル異常を感知、ディープスキャンを開始します。……“神聖なる覚悟”スキルを発見しました。5秒後に心の本領域へ2人を移動させます。テーブルに頭をつけましょう。サナーさんにもお伝えください。


 慌ててサナーに

「サナー!テーブルに頭つけろ!」

そう叫んで俺もテーブルに頭を付ける。

「こうか?」

不思議そうにサナーがテーブルに頭を付けたのを見た瞬間、俺の意識は途切れた。



 ……



 目を開けると、心の本棚があり、椅子に座ったモノラースがニヤニヤしながらこちらを見ていた。隣で倒れているサナーを起こすとティーン兄そっくりのモノラースを見つけ、震えながら俺の背中に隠れる。俺たちの背後から

「モノラース、説明を願います」

いつの間にか居た顔の見えないメイド服姿の女性が、少し怒った様子で尋ねると、モノラースはそちらを睨みあげ

「分からん。少なくとも俺との融合後ではない。仮に、二つ尾の女神側から接触があったとしたら、サナーの人生の何処かのタイミングだろうが、間違いなく女神はこの次元を生きていない。未来も過去も自在に行き来してるはずだ」

女性は憤然とした様子で黙り込むと、サナーに優しく

「ボウガーについて知りませんか?」

「しっ……知らないっ!」

女性はよく見えない顔で明らかに嬉しげに微笑むと、俺を向き

「この事態についての説明をしてよろしいでしょうか?」

俺は黙って頷く。サナーは俺の背中に強く抱きついた。


 女性は何処かからパイプ椅子を3脚持ってくると俺たちの前に並べ、座るように促し、自らも座り

「この世界の生き物に絶対に自然発現しないスキルが2つあります。”無償の愛をばらまく花”と”神聖なる覚悟”です」

サナーが震えを止め

「知ってる!二つ尾の女神の固有スキルだよな!地元にある教会の偉そうな神父が言ってた!」

女性はぼやけた顔で微笑んで頷き

「このどちらかのスキルが発現した存在は、二つ尾の女神との直接接触があったと推定されます」

「へー。女神ってホントに居るんだな。教会の集金のためのデタラメだと思ってた」

サナーが他人事のように言うと、少し離れて座っているモノラースがため息を吐き

「サナー、お前の所持スキルに神聖なる覚悟が発見されたんだよ」

「えっ……ティーン……様……なんで……それを」

モノラースは項垂れながら舌打ちして

「俺はモノラースだ。この身体はナランへの嫌がらせでイメージとして映し出しているだけだ」

混乱した様子のサナーに、女性が優しく

「神聖なる覚悟スキルは、二つ尾の女神の加護スキルです。スキル枠拡張やレベルアップ補助、学習意欲増大等の効果が確認されています」

「えっ……つまり……私は女神に気に入られたのか!?あれっ……凄くない!?」

嬉しそうな表情になっていくサナーの向こうでモノラースが、女性に悪意がある顔を向け

「お前が、策謀の為に無垢なナランを利用し過ぎたせいだ。二つ尾の女神は世界の調停者であり、創造者だ。ウィズ王家を徹底的に利用し、一気にパワーバランスを変えようとした罰で、サナーに加護を与えたんだろうな」

女性は黙り込み、少し考えた後

「サナーさん、失礼します。記憶を確認させて頂きます」

サナーの頭に手を伸ばし触れた直後、感電したように激しく震え出した。そして、明らかに声色が違う女性の声で


「サナーちゃん、頑張って」


そう言うと震えがピタッと止まる。モノラースは立ち上がり両手を叩きながら狂気の笑みで笑い出し

「これは傑作だ!女神様はサナーが好きなんだと!リブラーに代弁させるほどにな!」

女性は深く息を吐くと、俺の方を向き

「サナーさんに”アンチダークフィールド””幸運の使者””解呪する殉教者”を追加。他戦力も勘案するに暗黒地帯征伐には充分だと思われます。では、現実世界に戻します」

けたたましく笑うモノラースの声が響き渡る中、俺はまた意識が落ちていく。



……


 サナーと同時に顔を上げる。ローウェルが怪訝な顔で

「どうしたんだ?いきなり2人で頭を下げて、すぐ上げて」

俺が慌てて、今起こったことを早口で説明すると、更にサナーが自慢げに足りないところを補足した。ローウェルは苦笑いしながら立ち上がり窓を開け、煙草を吸い始めた。アンジェラは腕を組んで考え込みだし、不安げなリースは椅子を俺に近づけ強く抱きついてくる。サナーはニヤニヤしながら

「二つ尾の女神様の加護を受けたスーパー奴隷勇者サナー様伝説の始まりだな!」

宣言するが、絶対ろくでもない伝説だろそれ……二つ尾の女神もなんてことしてくれたんだよ……こいつ、一瞬たりとも神に祈ったことなんてないんだぞ……本気で信仰してる神父とか村人や奴隷仲間を見て俺に何度も

「神が居るなら奴隷なんて居るわけないだろ。あんなの集金の道具だ」

とか言って超絶馬鹿にしてたし、仮にも神様なら加護する対象ちゃんと選べよ……ふざけてんのか……。王都に来てから最大の驚きを通り過ぎて、もはや人生最大級の不安しかない。

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