表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冴えない俺が、何でも教えてくれる魔法を手に入れたけど……  作者: 弐屋 丑二
宿主の精神領域拡張による負荷テスト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/128

真実を知る者

 ヘグムマレーの言った地名は俺でも知っている場所だった。

「エルブキングス暗黒地帯って、確か、タリア廃墟群が50年前に変化してできた危険地帯で……」

アンジェラが憂うげに

「……残念ながら我々の侵攻事業が成功してしまった地域よ。1人の人間のせいでね」

俺が驚いているとヘグムマレーが頷いて

「50年前、ヘコムという隠者がタリア廃墟群奥地の王城跡で細々と1人暮らしておった。彼は庶民の生まれでな、凄まじいマイナススキル持ちじゃったのよ。人の中で暮らせぬので隠者になったわけじゃ。アンジェラさんによると、そこに運悪くリサーチ不足のヒト族の大手侵攻会社が出現した」

それも初耳だった。思わずヘグムマレーに

「どんなマイナススキルだったんですか?」

尋ねてしまうと、彼は黙ってアンジェラを見つめる。


 アンジェラが仕方なさげな表情で、ポケットから金属の塊を取り出し、長い指で操作しながら

「魔の眷属を従えし王、更なる混沌、酔狂なる支配者の3つね。要するに我々ヒトを操作しやすいマイナススキル群よ。マイナスじゃないスキルも知りたい?」

「は、はい……」

アンジェラは再び金属の塊を操作すると

「陰陽の交錯、アトリエの陽射し、仕組みを知る者、喜びの道標よ。全てレベル10ね。マイナススキル群がなければ、天才として歴史に残っていたと言われているわ」

「あ、あれ……後ろ3つのスキルって……」

聞き覚えがある。ヘグムマレーは大きく息を吐くと

「そうじゃ。リブラーがメッセージとして君に付けたスキルと一致する」

アンジェラは真剣な眼差しで

「リブラーに尋ねてくれる?ミャーマちゃんは気にしないで良いわ」

不思議そうな表情のミャーマをチラッと見ながら言う。俺は頷いてすぐ

「リブラー」

と唱えた。


何故ヘコムさんと、昨日付けた一部スキルが一致しているかというお尋ねですね。もちろん偶然ではありません。こういう場面で、我々リブラーへの質問をして貰うという意図もありました。


俺がすぐに今言われた内容を2人に伝えるとヘグムマレーが渋い顔で

「もったいぶっておるな」

アンジェラも頷き

「ミャーマちゃんを引き寄せた意図を尋ねてくれる?」

良く意味が分からないが

「リブラー、今のアンジェラさんの質問に答えろ」

またいつもの声が


ミャーマさんは”真実を知る者”という極めて稀なレアスキルを持っています。これは物事の真偽を即座に見抜くスキルで、更に解呪スキルを獲得すると大いに有効に働きます。他にも”幸運の使者””優しき天使””心の傷を癒す口””アンチダークフィールド”持ちです。本人は気付いていませんが、人間基準で述べるとハイプリースト相当のスキル群です。エルブキングス暗黒地帯へと行くのならば、連れて行くと良いでしょう。


驚きつつ、そのまま言われた事を伝えると、ヘグムマレーは明らかに感動した表情で固まった後、大きくため息を吐いて、キョトンとしているミャーマを優しげに見つめ

「だから奴隷制度はダメなんじゃ。才ある者達を埋もれさせてしまう」

椅子から立ち上がると

「話は変わるが、ミャーマさんにはご両親は居るかね」

「居ないですう……兄弟姉妹親戚も居ないですう。生まれてずっと奴隷かなあ」

ヘグムマレーは頷くと

「……養子として我が家に来ぬか?」

とんでもない事を言った。


 俺が慌てて

「いや、ヘグムマレーさん!それはさすがに……リースの意見も……」

元奴隷がいきなり王族になるなんて、使用人達も反対すると思う。ヘグムマレーは俺を優しげに見ながら諭すように

「ナランさん、いや娘の婿となるナランよ、良いかね」

「は、はい」

「リースは跡継ぎの実子じゃ。これは覆されぬ事実である。そして君という素晴らしいパートナーを得て、生来の豊かな才能が大いに伸び始めた。もう心配いらぬ」

「はい……」

「我が家の使用人達は賢い。私がミャーマさんを養子にした大きな意図をすぐに察するはずじゃ」

「ど、どういうことですか?」

ヘグムマレーは微笑んでミャーマの隣に座る。代わりにアンジェラが

「真実を知る者のレアスキルを、先代王も持っていたのよ。滅多に発現しないと聞いているけれど?」

衝撃を受けてしまう。何て俺は馬鹿で無学なんだ。きっと博学な俺の兄貴たちなら一瞬でヘグムマレーの、兄である先代王を想う強い気持ちが分かって同意したはずなのに。くそおお……勉強できなかったのをこんなに恥ずかしく思った瞬間は無い。


 ヘグムマレーとアンジェラがミャーマに話があるというので、俺は宿泊室へと帰らされることになった。凹みながら扉を開けると、部屋の明かりが点いていて、リースが窓から外を眺めていた。ベッドに倒れ込んで天井を見上げしばらく黙っていると、リースはベッド脇に座り

「……大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも……」

しばらく黙っているとリースが覚悟を決めた表情で

「聞かせて」

と言って来た。


 寝転んだまま、全て話し終えると、リースは大きく頷いてニコッと笑いながら

「流石、お父様ね」

「怒るかと思ってた」

リースは機嫌良く首を横に振り

「私の妹になるからには、ナランに手は出せないわ」

「そこ?」

「そこが一番大切。先代王と同じスキル持ちを見つけて、お父様の気持ちが安らいだのならばそれが次に嬉しい」

安心すると気が抜けた。リースはやはりヘグムマレーの娘なんだな。俺なんかより遥かに事態の理解が早い。俺みたいな無学の農家の三男に王族の旦那が務まるんだろうか……。


 リースに寄り添われてまた眠くなっていると、扉が開いて慌てた様子のミャーマが

「ナラン様あ……リース様あ……私い……王族になるってえ……」

困った表情でベッド脇に駆け寄ってきた。思わず上半身を起こして

「話の意味分かってなかったのか!?」

俺より察しが悪かったらしい。もしかするとミャーマはレアスキル群に人生を助けられすぎて、肝心の真実を知る者のスキルをちゃんと使えてないのかも知れない疑惑が出てきた……。リースはニコッと微笑むと、座り込んだミャーマの頭を撫でて

「よろしいよろしい。姉の私が王族の作法を教えてあげるわ。まずは朝食からね」

そう言った。


 朝日が差し込むのを待ち、やたら広い廊下をリースとミャーマと3人で歩いていく。会釈してくるメイド達に俺とミャーマは会釈を返してしまうが、リースは一切反応しない。

「一々反応すると、向こうが気にするからね。軽く反応するか、無視するのが大事よ」

「そんなもんかあ」

「……ミャーマあ……王族無理かもお」

「慣れよ。慣れなさい」

そんな会話をしながら同階の広く清潔な食堂へとたどり着くと、既にヘグムマレーとアンジェラが窓際のテーブルで何かを話していた。居心地悪そうにミヤも少し離れたテーブルに座ってスープを飲んでいる。


 ミヤはこちらに気付くと必死に手招きしてきて、俺たちがテーブルに着席するとようやく安心した様子で声を潜めて

「いやひどかったんだって!」

「どうしたの?」

ミヤはアンジェラが持っているのと同じ様な金属の塊を取り出して、俺たちに何かが映っている画面を向けると

「姉貴がアンリミテッドボードで撮ってた私の動画がバズっちゃって!今私達の国で大変なことになってるの!」

3人で顔を寄せあって小さな画面を見ると

「ピーッ!ちゃん、可愛いでちゅねえ……お姉さんは幸せでちゅよー」

などとぼやけた顔のアンジェラが、黒い目線が入った赤ん坊姿のミヤを抱き上げてあやす姿が映っていた。リースが興味深げに

「この機械は何?これアンジェラさんとミヤちゃんよね?」

ミヤはボソボソと

「携帯端末……電話したり、ネット見たり出来る……他にはアプリで色々できる」

リースは頷くと

「アンジェラさんも持っていたものね。これはミヤちゃんの?」

「だったんだけど……実家に置いてたのを、わざわざ姉貴が持ってきて、ネットの衛星契約までしてさあ……動画がバズってるのも教えて渡してきた……ムカつく!」

良く分からないので

「何が問題なんだ?」

ミヤは顔を真っ赤にして俯き

「……アンリミテッドボードの検索結果が上位に……って言っても分かんないか……要するにさあ!」

怒った顔を上げると

「う、うん……」

「我々ヒトが!アンリミテッドボードやりたがってるってこと!私の赤ん坊コスプレ動画きっかけで!」

「……」

それはもう俺には良し悪しが分からないので黙っていると、ミャーマがミヤと向こうで話し込んでいるアンジェラと、携帯端末を見比べ

「……お姉さん、ミヤちゃんにい、もっとお、大きな……うーん……世界かなあ?そういう大きなことをー……知って貰いたいみたいかなあ」

ミヤは横を向き、携帯端末をスカートのポケットに突っ込むと

「いいよ。そういうの」

ポツリと言って、スープを飲み出した。


 朝食がくる前に俺たちの前にメイド達によりナプキンとフォークとナイフが置かれ、コーヒーが置かれたタイミングでリースがナプキンを膝の上に広げ、俺たちも真似をする。ハムの添えられた目玉焼きをナイフとフォークで切り分けてリースは口に運んでいき、俺も真似をするが、ミヤは早くも飽きたようでいつものようにフォークだけ使って適当に食べ始めた。ミャーマは派遣での経験が活きているのか俺より遥かに上手く出来ている。色々あったし、今日も色々とありそうだが……この朝食はすげー美味い。それだけは確かだし、その幸せを今は噛み締めようと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ