ちゃんと説明
な、何かよくわからんが
「エシュリキアコーライってかっこいい名前ですね……」
2人は顔を合わせて、そして笑いながら青い方が
「失われた古代語で大腸菌って意味なんですよ。お腹に棲んでいる良い菌のことです」
「そ、そうなんですか」
よくわからないが、色々と難しそうだな……と思っていると青い方が
「姉さん!この人!もっと触りたい!2階のカプセルに一緒に浸かる!」
赤い髪の方が少し困った表情で
「バグじゃないなら、ここに来た意味があると思うけど……」
直後に俺の近くに魔王コスプレのボニアスが出現し、驚いていると
「すまんすまん。ハーピー姉妹の家じゃったか。探すのに手間取った」
青い方が右手を上げながら
「おー、ボニアスさーん。見てみて腋毛」
「ふっ……ノヴェナちゃん、今度にしよう」
シリアスな顔になったボニアスに、俺が胡乱な視線を向けると
「完全に同意の上じゃ。わしの中でサナーちゃんは超えておらんぞ」
ノヴェナと呼ばれた青髪の女性が
「サナーちゃん、サナーちゃんってボニアスさんよく言ってるよ」
「……」
黙ってボニアスを見ると照れながら
「そこのモニターを使わせて貰うぞい」
そう言って壁にかかった金属の黒い板を指さした。
次の瞬間には金属板にニャバロン宮殿中庭一面のアンリミテッドボードが映り、女性の声で
「我ら、エシュリキアコーライの住む亜空間ミシュデアのエネルギー源であるアンリミテッドボードですが、近年、エネルギー不足に陥っています」
解説が入ると、映っている景色が変わり、今度はあらゆる角度から突き出たビルや、逆さに浮いているのを家々が無数にある不思議な空間を映し出した。女性の声が
「アンリミテッドボードが吸収する魔力……つまり、混沌粒子を量子エネルギーへと転換し、半現実とも言える亜空間を生み出してきた我らですが、近年混沌粒子吸収量が減っており、膨大な魔力を持つ強力なプレイヤーを多数呼び寄せる事が急務となっています」
意味わかんねえな……と思っていると、いきなり背後で
「あーそういうことだったのねえ」
アンジェラの声がして振り向いた。
いつの間にか腕を組み、金属に映った景色を眺めていたアンジェラは、ボニアスに
「会議に加えて頂いて感謝するわ」
軽く会釈をすると
「我らヒトもかつてはプラネットアースという星に住んでいたのよ。避難民として同じ立場ね」
ボニアスは頷くと
「知っておるよ。滅びたのじゃろう?」
「……戦争の末に一瞬でね。その後、いろいろあってこの星の地下に移住させてもらってるわけ。私が生まれる遥か昔……ご先祖達の話よね」
俺は一体何を言っているのか分からないので、ひたすら黙って聞くしかない。アンジェラは苦笑いしながら
「アンリミテッドボードは、植えられた場所が悪かったわね。動かせないの?」
ボニアスは難しい表情で
「無理じゃな。ヒトとしてのプレイの感触はどうかね」
アンジェラは首を軽く横に振り
「……アトラクションとしても難しいでしょうね。あくまで人間用という感じ」
ボニアスは大きく息を吐くと
「よろしい。仕方ないナランよ。正規ルートでゴールせい」
「いや、意味わかんねえよ!」
思わずそう言ってしまうと、ボニアスはニカッと笑い
「魔王になれ。わしはお前にやられた後に裏で動く。アンジェラさんもナランのサポートに回って貰う」
「良いわ。他種族保護はヒトの使命だからねえ」
アンジェラはそう言うとその場から消えた。黙っていたノヴェナがボニアスに抱きついて
「怖かったんだけど!」
ボニアスは何と申し訳なさそうに
「元プラネットアース人達は攻撃性が極めて高いからのう……とは言えアンジェラさんは分厚い知性と教養でそれを包んでおるから大丈夫じゃ」
俺はもう何言ってるか一つも分からず、ボニアスに
「おい!ちゃんと説明しろ物知り性犯罪ざ……!」
尋ねようとした瞬間、意識を失った。
……
「ナランさん!魔王撃破!戦闘ターン数1。称号、最強冒険者を獲得しました!次のターンまでお待ちください」
係員の声で起こされる。俺は魔王の玉座に座って寝ていて、ボニアスはもう居なかった。夢だったのか?いや、確かにミシュデアに行ったよな?魔王と戦闘なんてしていない。ま、まあ良いか……とにかく次のターンを待とう。リースを助けなければいけない。
玉座から立ち上がり、いつでも出られる準備をしているとアンジェラが玉座の間の扉を開いて入ってきた。
「さっきはどうもナラン君、西の国から正規ルートでワープしてきたわ。あなたは次のターン、新魔王となり、そして自動で魅了の効果を他の全プレイヤーにかけるの」
「魅了ですか?」
「そう。その効果により、我々を5ターンの間自由に操れる。なので」
アンジェラはポケットから鳥の羽根を2枚取り出し
「この、空蝉の羽根で、私と共にアン王女の場所へワープしましょう。魅了状態の他プレイヤーと同じマスに居るとき、あなたはそのプレイヤーのアイテムを自分の為に自由に使えるの」
「リースの場所じゃダメですか?」
アンジェラは悲しそうに首を横に振り
「意味が無いわ。羽根も2枚しか無いし」
と言った。




