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第20話:呪詛の根源

 

(……わあ、広いお部屋だぁ……)


 エンジュ陛下のお部屋もすごく広いからね。それに元々、帝国は造りのあれこれがわたしのいた王国より色々と大きい。大柄な人が多いからかな? だからちょっとやそっとの広さでは驚かなくなってきたけど、その中でも特にこの部屋は大きかった。


 案内された部屋は、陛下のお兄さんたちふたりのお部屋だった場所。

 陛下に頼んで連れてきてもらったこの部屋に、おそらく呪いのカギとなる呪術具がある。


 呪術師とかならともかく、一般の人が簡単に「呪われろ」といって呪えることはない。呪術師の魔力を込めた、呪術具が必要になる。

 だからお兄さんたちが原因とわかれば、話は早い。

 その「呪術具」を見つけて、壊してしまえばいいのだ。 


 高い天井に重厚なカーテン、深い赤の絨毯、そして壁いっぱいに飾られてる物珍しい美術品――一言でいうと豪奢だ。陛下の部屋と正反対っていうか、なんかこう、いわゆる皇子!って感じ。キラキラしい。

 ちょっと部屋の中を見るだけでこの部屋の主たちがどんな人だったか、なんとなく伝わってくる。


「ふたりで使っていたんですよね? お兄様方……」

「そうだ。双子だったから、何かと一緒だった。学問も、訓練も、寝所も」

「仲良し……だったんですね?」

「そうだな、お二人はいつも一緒で、俺も良くこの部屋に呼んでもらった」


 エンジュ陛下の声に、ふっと影が差した。

 わたしはそれ以上は深く聞かず、部屋の中をそっと見渡す。

 高そうな調度品が並んでいて、あっちもこっちも気を使ってしまうけれど――でも今は遠慮していられない。


「それじゃ、少しだけ失礼します……」

(家探しみたいでごめんなさい)


 心の中でそう謝って――、まぁ、クソったれなところもあったみたいだしそんなに遠慮しなくていいかな!なんて思いつつ、そろりそろりとその豪華な机に近づく。

 

 ……と。

 最初はそんな風に遠慮がちだったけどね。

 次第にこの部屋の規模だと遠慮してる場合じゃない!!ってなって、もうガッタンガッタン引き出しを開けて、棚をあさった。それはもう、思いっきり。

 どこかに、“呪い”の媒介になったものが残っているはず。普通、呪術具はそこらにポイっておいておかないから、道具に紛れていたり、隠されたりしていることが多い。

 慎重に……それでもテキパキと。


「これは……香炉? 違うよね」

「そっちは俺が見る。キーラは奥を頼む」

「はいっ」


 言われたとおり、わたしは窓の近くのキャビネットに向かった。

 奥の扉はきつく閉まっていたけれど、そっと力をかけると、ギィ……と重たい音を立てて開いた。

 中には、細々とした器具や瓶、古い巻物のようなものが無造作に置かれていた。どれも一見、ただの古道具に見えるけれど――でも。


 感じる。


「……あった……! 陛下、ありました!」


 わたしの手が、自然とひとつの(はこ)に伸びた。漆黒の木に金の装飾。中央には、見慣れない印が刻まれている。それを手に取った瞬間、背筋がぞくりとした。


 見たことが、ある。

 これはラグーノ王国の隣国の旧呪術――今では禁止されているモノじゃなかったっけ……?


「なに?」


 エンジュ陛下がこちらに近寄ってくる。

 わたしは、その小匣を両手で包み込むように抱えながら、顔を上げた。


「……禁忌の呪術具です。これは……かなり、強いものかも。何か、封じられてる気が……っ」


 その瞬間だった。


「きゃあ!」

「キーラ!」


 まるで、指先から冷たい針が刺さるような感覚が走って――次の瞬間、視界がぐらりと歪んだ。


「――え? ……ええええっ」


 手の中の匣が、ぐにゃりと形を変え、暗い霧が溢れ出したと思ったら……わたしの身体が、そのまま吸い込まれていく感覚に襲われた――ううん、違う! 身体が飲み込まれてる……!?


「キーラッ!」


 エンジュ陛下の叫びが聞こえたけれど、その声もどんどん遠のいていく。

 光が、音が、空気さえも、すべてが真っ黒に塗りつぶされて――



 気づけば、わたしは、真っ暗な匣の中に閉じ込められていた。



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